これからの時代(Era) をつくりだす存在となるであろう業界注目の若手経営者にフォーカス。そのビジネス観や経営哲学に迫ります。今回は「IKETEL・松本栄祐代表取締役社長」を取材しました。
旅行好きが転じて起業へ
全国47都道府県を最低各3回は訪れている大の旅行好きだが、過疎化や高齢化、産業空洞化など地域の活力を削ぐ現実を目の当たりにすると心が痛んだ。地域を活性化するには、どうしたらよいのかを思い悩んだ末に導き出したのが「産業を呼び込み、雇用を創出することが近道ではないのか」だった。
製造業で製品開発に従事していた経験を生かし2021年に起業したIKETELは、製造工程の最上流に位置する製品開発を支援するシステム開発に取り組む。日本の産業構造を考えると「製造業の競争力を高めることが地域活性化につながりやすい」との見立てがあったからだ。
属人的な日本の製造業
かつて世界5大陸の制覇を目指して海外旅行に出向いたとき、旅先で日本のイメージを尋ねると「アニメやサッカーと並んで日本製品を挙げる人が多かった」。日本の製品が依然として海外でも評価されていることも製造業を支援する十分な動機づけになった。
緻密につくり込んでいく「すり合わせ型」を得意とすることが多い日本の製造業は、裏を返せば職人技への依存度が高く、属人的になりやすい。製品開発の担当者は知見やノウハウを持つ人にあれこれ聞き込んだり、社内に散逸した過去の履歴を探し回ったりと、基礎的な資料集めに時間がかかる。
雇用創出で地域を活性化
IKETELは「独創的な製品開発の本業に費やす時間をより多く確保する」ことを目的とした製品開発支援SaaSの「ラクション」を開発している。すでにプロトタイプまで開発済みで、今秋をめどに本格的な商用サービスを始める予定だ。
日本の製造業でヒット商品が増えれば、工場の新設や増設につながり、地域経済の活性化に結びつく。雇用が増えれば人口も増え、税収増によって地域インフラの整備もできる。魅力ある街になれば観光で訪れる人も増える。「全国を“イケテル”地域ばかりにしたい」と社名に込めた思いを語る。
プロフィール
松本栄祐
1992年、大阪府生まれ。2017年、東京大学大学院新領域創成科学研究科修了。同年、ダイキン工業に入社し、製品開発に従事。21年、IKETEL(イケテル)を起業。
会社紹介
製造業向け製品開発支援SaaS「ラクション」を開発するほか、製品開発のオンライン相談サービスや地域活性化の伴走支援などを手掛ける。