これからの時代(Era)をつくりだす存在となるであろう業界注目の若手経営者にフォーカス。そのビジネス観や経営哲学に迫ります。今回は「匠技研工業・前田将太代表取締役社長」を取材しました。
弁護士ではなく起業へ
祖父、父が弁護士で、自然と自分もその道を歩むと思い、幼少期から弁護士を志していた。大学院在学中、起業家教育講座に参加し、世の中の課題解決のために起業という手段があることを知った。「弁護士の仕事は優秀な友人たちに任せて、自分は総合力で世の中の課題を解決する方向に進もう」。同じ志を持った友人と会社を共同創業した。
事業内容を模索する中で、中小の製造加工工場を訪れた。社長が現場での作業に加え、夜間は見積もりの作成に忙殺され、厳しい経営状況に置かれている様子を目の当たりにし、「中小製造業は同じ課題があるのではないか」と30社ほどを訪問。中小製造業にフォーカスすることを決めた。
原価計算を適正化
提供するソリューションを、工場経営DXシステムと表現する。顧客の9割は製造業の中小サプライヤー企業で、完成品メーカーの部品を製造している。原材料費の高騰など市場状況も相まって、「正しい原価計算をしないと、どんどん経営が苦しくなってしまう」
適正な利益が出る原価計算の仕組みをSaaSで提供。現場に入り込んで伴走も行い、製造業の本質的な課題を解決することが、日本の競争力向上にもつながると考える。「誰かが必ず向き合わないといけない大きな課題。それを解決していきたい」
変化に強くありたい
顧客の多くが多品目少量生産の業態で、見積もりの頻度が高いため、自社ソリューションで高い効率化が見込める。目の前の業務を効率化できるだけでなく、データの蓄積によって、製品に搭載するAI機能をより活用できるようにもなり、良いサイクルを回せる。目指すのは「フェアで持続可能なものづくり」だ。
経営者として「常に変化に強くありたい」と意識する。業界、テクノロジーの変化に柔軟に対応し、会社も自分自身も変わり続けている。仕事は人生において大きな要素を占めるからこそ、「日々後悔しないよう、エネルギー高く向き合いたい」。誇れるものづくりを支援するという高い理想に向かい、自身も会社も突き抜けた成長を目指し続ける。
プロフィール
前田将太
1996年生まれ、東京都出身。東京大学法学部卒業、東京大学大学院法学政治学研究科中退。2020年、大学院在学中にLeadX(現匠技研工業)を創業。
会社紹介
中小部品メーカー向け見積支援システム「匠フォース」を提供。データを活用して適正価格判断を行うことで、「利益体質な経営」「技術承継」の実現を支援する。東京本社に加え、名古屋市に支店を置く。