これからの時代(Era) をつくりだす存在となるであろう業界注目の若手経営者にフォーカス。そのビジネス観や経営哲学に迫ります。今回は「Nobest・石井宏一良代表取締役」を取材しました。
自家発電が使えれば
ごみ拾いを始めたことがきっかけで、小学生の頃からずっと環境問題に関心があった。その後、環境学を学ぼうと工業大学へ進学。卒業後に企業で開発に打ち込んでいたおり、東日本大震災で岩手県の実家が被災する。電気などインフラが使えなくなり、胃がんを患い自宅療養中だった父親を含め、家族は避難所に行くほかなかった。
なかなか自宅に帰れず、父親は発災の半年後に亡くなった。「残されたわずかな時間に、好きな野球を見せてあげたかったし、寒い中でも暖を取らせてあげたかった」と無念が募る。ボランティアで地域の被災状況と向き合ううち、「自家発電などの設備が整っていれば、多くの命を救えただけでなく、もっと普通の暮らしができたのではないか」との思いを強くした。
安全性を自動で判断
スマートメーターの開発など技術者としての経験を積んだ後、2022年にNobestを創立。太陽光設備の監視とメンテナンスを続ける事業者向けに、業務をシステムで代替するプラットフォーム事業を展開する。脱炭素のためには太陽光発電を増やす必要があるものの、維持管理を担う人材は不足しており、課題解決に一役買いたいと願う。
現在は大規模設備の事業者向けのサービスだが、蓄積したノウハウを生かし、いずれは一般家庭向けにも展開したい。過去の震災では、太陽光を導入しているのに、被災後の漏電が心配で電気を使えなかった住宅が多数あった。「災害に遭っても『このブレーカーなら大丈夫』『テレビなら見られる』など、検知した内容を基にシステムが自動で安全かどうかを判断し、伝えてくれるサービスを展開したい」と構想する。
最適解を求め続ける
事業を通じて実現したいのは、自然に優しいだけでなく、災害にも強いスマートシティだ。環境と経済のどちらかを優先するのではなく、ビジネスと環境に良いことが両立する最適解を諦めずに求め続けたい。「どちらかが『一番』ということはない」という思いを込め、社名はNobestと名付けた。
さまざまな思い込みにとらわれず、「何事も決めつけない」ことを信条に、日々の仕事に向き合い続けていく。
プロフィール
石井宏一良
1984年生まれ、岩手県一関市出身。東北工業大学卒。ユビキタス、村田製作所などでの勤務を経て、2022年にNobestを創立。
会社紹介
主に太陽光設備向けの設備管理トータルソリューションを手掛ける。発電状況を監視し、集めたデータを気象などの情報とともに分析して、異常発生時の調査を効率化するサービス「Nobest IoT」などを提供している。