これからの時代(Era)をつくりだす存在となるであろう業界注目の若手経営者にフォーカス。そのビジネス観や経営哲学に迫ります。今回は「ADVATEC・池田和泉代表取締役」を取材しました。
表参道に憧れて
広島市のサラリーマン家庭で育った。高校1年の時、母親と訪れた東京・表参道で、ふと見上げると洗濯物が見えた。「あそこに住んでみたい」。家賃を調べ、必要な収入を逆算するうちに、「お金持ちになるには起業しかない」と考えるようになった。
小学生からバスケットボールを始め、中学時代は広島県の優秀選手に選ばれた。だが高校2年でバスケをやめた。選手として成功するより、自分で事業をつくるほうが目標に近づける。パソコン部へ移り、事業計画書のつくり方や損益計算書について学び始めた。
満たされなかった成功
高校卒業後すぐに起業したかった。しかし両親から「手に職をつけてほしい」と言われ、薬学部へ進んだ。病院や薬局での実習を通じ、医療現場の素晴らしさを知った。一方で、「自分の居場所はここではない」と思った。起業への思いが勝り、大学3年で中退した。
22歳で起業した最初の事業は、ウォーターサーバーの代理店。昼はスーパーの店頭に立ち、夜は24時間営業の店舗で買い物客に声を掛け続けた。「成功するにはこれぐらいやらないといけない」。年間営業成績は全国1位になった。その次はインフルエンサーを活用したアパレル事業へ。新たに立ち上げた会社は急成長し、2期目で売上高10億円に達した。憧れの表参道にも住んだ。だが、不思議と満たされなかった。
妻の一言
転機は2024年。通院に付き添った妻の診察後の一言だ。「先生はずっとパソコンを見ていた」。薬学部を中退して約10年。医療の世界から離れていたが、医師がカルテ入力に追われる事情は分かる。でもその姿に、「話を聞いてもらえていない」と感じる患者がいる。そのギャップに気付いた。
「先生が患者さんの目を見て話せるようにならないだろうか」。その思いから生まれたのが、診察中の会話からカルテを自動作成する「コエカル」だ。300を超える医療機関に導入され、カルテ入力の負担軽減や残業削減に喜びの声が届く。「ようやく自分が本当にやりたい事業にたどり着いた」
プロフィール
池田和泉
1992年生まれ、広島県出身。広島国際大学薬学部中退。2015年にプレミアムウォーターホールディングスの営業会社を設立。18年にアパレルD2C事業を展開するnodeを設立し、20年に上場企業へ売却。同年、KOLテクノロジーズ(現ADVATEC)を設立。当初はSNSマーケティングを手掛け、26年に「コエカル」を正式ローンチ。
会社紹介
音声AI医療カルテ作成支援サービス「コエカル」を開発・提供する。診察中の会話をAIが解析し、医療現場に適した形式で記録を自動作成する。医師の記録業務を支援し、患者と向き合う時間の創出を目指す。