1月末に大手電機メーカーから、第3四半期（2001年10－12月期）の業績が発表になった。すでに第1四半期（4－6月期）が終了した時点で半導体事業の未曾有の業績悪化により、大幅なリストラ、業績の下方修正を行った各社だが、通期見通しについてもさらなる下方修正を行った。

　各社の通期売上高の見通しだが、富士通は10月時点の予測に比べ、2000億円減となる5兆円と予測。東芝は1000億円減の5兆3600億円、NECは2300億円減の5兆700億円。

　富士通では業績下方修正の背景を次のように説明する。「米国の景気後退が深まり、国内の景気についても個人、企業ともに消費の一段の減速が予測される。正直なところ、第3四半期については予想の範疇だが、第4四半期（02年1－3月期）については厳しい見方をせざるを得ない」（高谷卓副社長）。

　つまり、年度末を目前にしたこの時期、夏の業績下方修正の要因であった半導体事業の悪化に加え、一層の景気減退が出てきたというのである。

　好調に推移しているシステム受注についても、「一部の案件は次年度送りになるケースが出ている」という。パソコンに関しては、「第4四半期は個人だけでなく、企業需要も伸びない」と、企業向けパソコン事業にも悪化の兆しが見えたという。

　昨年10月にパソコン事業の構造改革を実施し、黒字転換を目指していたNECでも、第4四半期はパソコン事業がかなり厳しい状況となったと説明。

「国内のパソコン事業は、ウィンドウズXPの発売でコンシューマは若干盛り上がりを見せるが、依然厳しい状況。コマーシャル向けは停滞気味だ。さらに、為替インパクトにより原価悪化要因を抱える」と、堅調とされてきた企業向けパソコン需要も停滞感があるうえに、円安の影響も収益を圧迫せざるを得ないと説明する。

　これにともないNECでは、今年度のパソコン事業の黒字転換は難しいとの見通しを示し、黒字転換実現は来年度下半期と当初の見込みが大幅にずれ込んでいるとした。

　つまり、富士通、NECともにパソコン事業に関してもかなり厳しい状況に追い込まれており、とくに通常であれば企業需要が一気に拡大する第4四半期についても見通しは予断を許さない。半導体事業のように大幅な赤字原因になりはしないものの、売り上げの巻き返しを図れるほどのパワーが企業需要についてもないということだ。

　確かに企業需要については、伸長している一部企業向けの案件を除いてはかなり厳しいという声が今年初からあがっていた。その状況がさらに厳しくなっていることをうかがわせる決算結果を大手電機メーカーが示したことになる。

　実は、2月5日に電子情報技術産業協会（JEITA）が発表した第3四半期のパソコン出荷統計において、01年度のパソコン出荷予想である1060万台が達成できるのかという質問に対し、「1月に入ってから、さらに景気の減速を感じている。また、2－3月は、前年が企業需要の高い伸びに支えられていたのに対して、今年は企業の投資意欲がまだ本格的に回復していない」と、異例ともいえる悲観的な見通しを出している。

　今年度のパソコン市場は、個人需要は前半から厳しいことがわかっていたが、企業需要に関しては楽観的な見方が出ていた。設備投資が厳しくなってもパソコンは特別との見方があったからだ。

　だが、そういってはいられないほど、日本の経済環境が厳しくなってきているということを、大手電機メーカーの決算が示している。

　もっとも、各社が今後の主力事業として期待するソフト・サービス事業に関しては、現在のところ堅調だ。NECの西垣浩司社長などは、「SI事業は絶好調。来年度はソリューション事業が中軸となって収益をあげていく」と気炎を吐くほどである。

　だが、来年度上半期までパソコン事業の黒字化を実現するのは、難しいのが実情。ソリューション事業がパソコン需要を引き上げるまでになるのは、現実的に難しい部分があることを感じさせる。

　大幅なリストラという文字が踊らない分、夏の下方修正よりも軽く捉えがちな第3四半期決算だが、きわめて重く厳しい内容だった。（三浦優子●取材・文）