コンシューマユーザーのブロードバンド化に続き、公衆回線を利用したブロードバンド網をビジネスに活用しようとする動きが高まっている。オービックビジネスコンサルタント（OBC）は、複数の拠点をもつ中堅企業向けに、専用線に比べはるかに安い価格でADSLを使ったシステムの提案を開始。大塚商会でも、法人ユーザーに対するブロードバンドの利用支援を全面的に行っていく体制を打ち出している。ISP側も、法人ユーザーを確保することが収益向上につながるため、法人向けサービスを前向きに捉える。今後、低価格な光ファイバーサービスが本格化すれば、専用線から公衆回線への乗り換えが大幅に進むと見られる。

低価格売りに専用線から公衆回線へ

　経済環境が厳しく、企業が新規のIT投資を渋る傾向が続くなか、明確にコスト削減を実現できる公衆回線を利用したブロードバンドサービスが、メーカーやSIerの売り上げに貢献する存在になりそうだ。

　公衆回線を利用したブロードバンドサービスをビジネスで活用する場合、最大のメリットは専用線に比べコストを大幅に安くできる点にある。

　OBCでは、ブロードバンド対応の「奉行21ブロードバンドパック」を販売するための参考資料として、専用線とADSLを利用した場合のコスト比較を行っている（図参照）。それによると、初期費用は専用線の方が低価格になるケースもあるものの、月々の利用コストは大幅にコストダウンできる。

　「ユーザー側がコストに敏感になっている時期だけに、これだけの価格差をアピールすれば、ユーザーには大きなインパクトとなり、急速に置き換えが進んでいくのではないか」（OBC・中山茂常務）とみる。

　専用線をすでに利用しているユーザーに置き換えを勧めていくことができるほか、これまで拠点間通信を行っていなかった企業に対し、低コストの新しいシステムを提案することが可能だ。拠点間ネットワークシステムを導入してもらうきっかけになることに、メーカー側は大きな期待をかけている。

　ISP側も、法人顧客を確保できれば安定した収益が見込めるうえ、「ADSL回線は昼間の利用率が極めて低く、利用は夜間に集中している。利用が昼間に集中する法人ユーザーを確保することで、昼夜バランス良く回線を利用してもらえる」（大手ISP関係者）と、回線利用の平準化にもつながるとみる。

　ただ、公衆回線を使ったブロードバンドサービスをビジネスで利用するにあたり、不安要因も少なくない。ADSLは昨年夏にヤフーBBが低価格サービスを発表して以来、急速に利用者数が増えているが、法人で利用するためには品質、セキュリティなど解決しなければならない面があり、ユーザー側からもこの点に対する問い合わせは多い。

　大塚商会ではISPとして「α-Web」を提供し、昨年12月から8Mbpsのサービスを開始。利用できるユーザー規模をSOHOだけでなく、中堅企業にまで広げるとともに、ネットワークの検証体制を整えるなど、本格的なADSL利用に品質面などで対応しつつある。

　OBCでは、実際のソリューション体験と実証のためのラボを3月1日にオープンし、セキュリティ面などでどのようなシステムを構築したらよいのか、ユーザーおよび販社にアドバイスを行っていく。

　企業向けブロードバンドビジネスは新たなマーケットだけに、ソフトメーカー、ISPともに早い段階でユーザーを獲得し、この分野でイニシアティブをとっていくことを目指している。ディーラー、SIerにとっても不況期に強いビジネスになっていきそうだ。