その他
どうするIP電話 NTTのジレンマ
2002/05/06 15:00
週刊BCN 2002年05月06日vol.939掲載
法人向け定額制サービスの影響とは
NTTがIP(インターネットプロトコル)電話への転換姿勢を強めている。NTTの参入はIP電話を一挙に主流に押し上げるインパクトがある。だが、NTTが現行の交換機網による電話からIP電話にすぐに移行すると考えるのは早計だ。なぜなら、NTTにはIP電話を本格展開できない理由が山ほどあるからだ。それでも通信網のIP化を世間にアピールしなければならないのは、幾多の通信ベンチャーが提供し始めたIP電話が、「痛くも痒くもない」状態でなくなってきたという事情がある。NTTにとってIP電話は、まだ「敵」なのである。
●ソフトバンクの挑戦
ソフトバンクは今夏にも、国内で初めての定額制IP電話サービスを法人向けに提供する。4月25日に提供を始めた個人向けIP電話サービス「BBフォン」と同じADSL回線を活用する。
現在、NTTやKDDIなどに支払っている月額通話料より20%安く契約できるのがミソ。企業にとって今より20%格安で、しかも毎月同じ通話料で済む定額サービスは魅力的だ。ADSLサービス「ヤフーBB」の時のような混乱さえなければ、多くの法人顧客をつかめそうだ。
サービス対象は、通話料が月額4万円以上、または10回線以上使用の法人。予想されていた定額サービスの登場だが、NTT側のショックは大きい。昨年市内通話料を3分8.5円に値下げしたNTT東西地域会社はもちろん、料金が高止まり状態の長距離通話料で収益の多くを稼ぐNTTコミュニケーションズ(NTTコム)にとっては、経営基盤を揺るがしかねない。
長距離通話料に依存しているのはKDDIや日本テレコムも同じ。「このサービスが普及すれば、長距離会社はつぶれかねない」(NTT幹部)と大手通信事業者は警戒する。
契約数が120万回線を超えたフュージョン・コミュニケーションズや2分6円の料金体系を売りにするメディア、BBフォンと同様にADSL回線を活用したイー・アクセスなど、IP電話は増える一方。じわじわと交換機網を蝕みつつある。
●NTTの“構造疲労”
NTTはグループ3か年経営計画で2001年度見込みで1500億円だった固定通信網への設備投資額を、04年度に200億円に削減する方針を打ち出した。IP網に投資を振り向ける考えだが、IP電話への移行計画を明示したわけではない。
NTTグループでは現在、東西地域会社子会社のNTT-MEおよび、ぷららネットワークスがIP電話に参入しているが、NTTコムが「領空侵犯だ」と反発。だが、NTTコムも接続サービス「OCN」で音声サービスを提供中。ADSL回線利用の本格事業化も密かに検討しているが、「東西(の県内電話などと)とぶつかる」ため実用化は未定だ。
4月10日に一部で報道された「NTTが10年でIP電話に全面移行」の記事は、NTT持ち株会社の設備計画を担当する第二部門が策定した内容。
だが、あの時点で東西地域会社との話し合いは全く行われておらず“寝耳に水”。
「10年でIPに全面移行するのは無理」(東日本幹部)との声は多い。グループ内調整の壁がIP電話の本格展開を邪魔している。
IP電話ベンチャーの攻勢にグループ内の競合。ISDNをかばったばかりにADSLに出遅れたNTTが、IP電話で再び同じ過ちを犯すのか。IP電話に対するNTTのジレンマは、NTTグループ経営の限界を象徴する“構造疲労”といえそうだ。(吉田 寛●取材/文)
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