重点育成事業も着実に成長

大塚商会が変貌を遂げている。2002年12月期の6月中間決算では、単体ベースの売上高が前年同期比5.2％減の1572億3700万円、売上総利益は同1.6％減の368億400万円、経常利益は同10.3％減の56億2300万円、当期純利益は同13.6％減の23億7100万円となった。一見すると利益指標の2ケタマイナスが目立つが、大塚裕司社長は「売上高の5.2％減に比べ、売上総利益は1.6％減にとどまった点に注目して欲しい」と、高収益体質への転換が進みつつある点を強調する。

●情報システムで高収益体質へ

1996年に3000億円の大台に乗って以降、売上高そのものは横ばい、社員数は減少傾向をたどっている。これだけを見れば「低迷」という言葉がはまってしまうが、大塚社長自身にとっては「高収益体質定着への過度期」との思いが強いようだ。

売り上げを追うより、収益を追うというのは、ここにきて日本企業の間にもようやく定着してきた。大塚社長は経営企画室長時代からこの点を強く意識、社内の意識改革と取り組んできたという。

「ハードの箱売りで利益を上げられる時代は終わる。ではどうしたらよいかと考え、まず社内システムの改革に取り組んだ。情報システムを活用、出荷指示を出したあとは人の意思が入らない仕組みを作り上げた。在庫数、最終仕入数、売掛金、与信管理、不良債権チェックなど経営に必要な数字が早いうちに入手できる体制だ。これにより、キュッシュフローは大幅に改善できた」と強調する。

こうした成果の1つの指標が有利子負債の圧縮で、「ピーク時の借入金は870億円ほどあったが、この中間期末には250億円になり、前中間期末と比べても72億円圧縮できた」という。

体質転換のもう1つの指標は利益指標だ。6月中間期の売上総利益は前年同期比1.6％減の368億400万円、営業利益は同11.8％減の55億6900万円、経常利益は同10.3％減の56億2300万円、当期純利益は同13.6％減の23億7100万円となった。

経常利益以下の2ケタマイナスについては、「販管費の中の退職給付費用を12億7300万円と、前中間期に比べ4億1600万円増額して計上したが、これを吸収するまでには至らなかった」としている。

それより大塚社長が強調するのは、経常利益の実額56億2300万円という数字だ。

「00年12月期の通期経常利益額とほぼ等しい数字を半期で稼いだ。下期には21億7700万円、通期で78億円を予定しているが、これは達成できるだろう。これは経常利益としては過去最高になる。まだまだ不満だが、高収益体質はそれなりに根付いてきた」と付け加える。

●粗利率の高いS＆S事業

事業面では「成長分野への経営資源集中」を積極的に図っているが、中間期決算で事業分野別の現状を見ておくと次のようになる。

同社は、事業を大きく①SI（システムインテグレーション）事業、②S＆S（サービス＆サポート）事業、③その他の事業、の3つに分けている。

SI事業には、複写機やコンピュータハードなどSI関連商品、受託ソフトなどが含まれ、S＆S事業にはサプライ、保守などが含まれる。

中間期売上高は、SI関連商品が953億6400万円で前年同期比11.5％減、受託ソフトなどが126億7300万円で同11.1％増、サプライが145億500万円で同12.3％増、保守などが346億9400万円で同2.8％増だった。

SI関連商品の落ち込みが目立つが、これはパソコン販売台数の減少が大きかったのが要因。21万5864台を販売したが、前年同期比7.2％減となった。ちなみにほかの主要ハードの販売台数は、複写機が同7.7％減の1万4476台、うちカラーは同18.5％増の3846台、サーバーは同9.2％増の1万129台だった。

SIとS＆Sの事業構成比は、売上高ではS＆S事業が31.3％だが、売上総利益では46.3％、営業利益は50.5％と半分を占める。

「SI事業は単月ごとのブレがあるが、S＆S事業はベースが固まれば確実な収入が見込める。販管費も少なくて済むので粗利率はS＆Sの方が高い。SI事業でユーザーを開拓、それをS＆S事業につなぐことで高収益体質を築いていく」というのが当面の戦略だ。

こうした現在の事業構成の中で、重点ビジネスとして本格育成に乗り出しているのが、ウェブ事業、「ODS21」、「SMILEα」、MRO（サプライ）、セキュリティ、教育ビジネスである。

6月中間期決算の実績で、最も事業規模が大きかったのはMROで145億500万円、前年同期比12.3％増だった。次いでウェブ事業の104億6600万円で、伸びは同92.5％増とほぼ倍増した。

SMILEαは91億7600万円、同4.4％減のマイナス成長だったが、昨年は大口のOEM受注があったためで、基本的には成長中という。

ODS21は74億4600万円で、同61.4％増。セキュリティは25億5600万円で、実に同142.4％の増加だった。教育ビジネスは14億3900万円で、同5.7％減。

これら重点事業分野のトータルは約456億円規模になり、全社売上高に占める比率は約29％だ。

「（今期からスタートした）New－Web戦略の中核をなすのが、現在力を入れているこれら重点事業分野。リアルビジネスとウェブビジネスの連携・融合を図ることで、ユーザーに本当のワンストップソリューションを提供していく。複写機、コンピュータ、通信、そしてウェブと、1社ですべてのソリューションを提供できるのが当社の最大の強み。トラブルが生じたとき、当社に電話1本頂ければ、すべて解決して差し上げる。この体制をつくり上げることが最大のユーザーサービスと信じており、全力を挙げていく」というのが大塚社長の決意だ。

大塚商会といえば、いまでも「歩け、歩け」と足で稼ぐセールスマン集団のイメージが強い。しかし、重点事業分野の成長につれて、そのイメージも変わっていくことになりそうである。

現在、04年12月期を目標にした中期経営計画を推進しているが、同年度の売上高は3683億円、営業利益102億円、経常利益99億円、当期利益37億円というのが目標だ。売り上げより利益という手堅い目標設定が目立つ。（石井成樹●取材／文）