その他
戦争開戦直後の米IT業界 つとめて冷静な対応に
2003/03/31 21:12
週刊BCN 2003年03月31日vol.984掲載
各社ともセキュリティ面で注意を喚起
国際世論を無視する格好で始まったイラク戦争だが、戦争終結後の政府の対応や、各種の法的規制などにはIT業界のみならず注目が集まっている。とくにセキュリティ関連企業にとっては、業績を伸ばすきっかけとなりそうだ。しかし多くの企業は戦争開始直後ということでコメントは歯切れが悪く、各種の調査機関も暫くは詳細な見解を述べるのは控えるものと見られている。そんななか、ニューヨークとサンフランシスコを中心としたIT関連企業に緊急にコメントを求めてみた。その多くは冷静な対応に終始し、当面は静観の構えを見せるに留まっていたが、当事者ならではの緊迫感も伝わってきた。(米ニューヨーク 田中秀憲(ジャーナリスト)●取材/文)
■懸念される物流への影響
悲惨な報道と自社イメージを重ねたくない各企業は、開戦と同時にテレビCMの制限を始めた。
米国トヨタは、1000億円を超える広告予算のうち、7割以上を占めるテレビCMを一時停止すると発表。現在好調なセールスを維持するために、この予算の他媒体への振り替えを急速に進めている。
媒体のなかでは、とくにオンライン分野への移行が顕著で、これまで広告主の獲得に悩んできた業界にとってはまさに千載一遇のチャンスだ。
また、これまでは野球のメジャーリーグやプロバスケットなど、放映権が高価なコンテンツは、その莫大な経費が負担であり、オンラインでの配信は困難だった。
しかし著作権料が発生しない戦争報道はこの心配がなく、すでにニュース配信大手のロイターは終日のストリーミング放送を開始。三大ネットワークの1つ、ABCニュースは、同様の速報ニュースの放送を、こちらは有償で始めた。
いずれも将来における収益構造化を目指している。
■家庭内向け商品の消費増
戦争により多くの米企業は自社の業務に影響を受けるのでは、との不安を表明している。
しかしダウンタウンに店舗をもち、オンラインショップも展開するJ&R社は、「ソニーのプレイステーションを始めとするゲーム機器や、大画面の液晶テレビなどに関しては、暫くは好調なセールスを期待できる」とコメントし、実際に店頭とサイトの双方で、これらの商品を積極的に販売している。
「旅行など、外出による娯楽は低迷するだろう。その一方で、家庭内向けの消費は増えるとの予測からだ」と同店関係者は語る。
同様に全米に展開する大手パソコンチェーン店、コンプ・USAの従業員は、「デジタルカメラやパソコンなども、普及価格帯の製品の売り上げが伸びるのではないか」と語る。
今回取材したIBMなどの米系企業と、京セラなどの日系企業のすべてが、セキュリティに関して社員へ注意を促していることを認めた上で、混乱に乗じたハッキングなどの懸念を伝えた。
現在、マンハッタンにあるIBMビルでは、取材のための撮影さえも厳しく制限されている。また大手レコード会社の社員は、「違法ダウンロードに悩む音楽産業界が、法的な制限が厳しくなることにより、違法ダウンロードに対する躊躇感が生まれることを期待している」と述べた。
IBMのチュック・クリスホルム広報担当や、ガートナーグループのアナリスト、フレンチ・コールドウェル氏などがすでに声明を出しているように、現時点ではどの企業も戦争による影響は皆無に近いといわれている。
しかもインテルのテオ・マロイ広報担当は、同社には緊急時の対応策までが用意されていると言う。さらにコールドウェル氏は「戦争が早期に終結すれば、今後一年半の間にIT分野への投資は一層増加する」とまで言い切り、いずれも強気のコメントだ。
しかし戦争が長期化した場合はこの限りではないと見られ、IT業界も含めて経済の先行きは不透明だ。
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