その他
教育ソフトに“流通革命”は来るか!? 総務省、「EduMart構想」で実証実験
2003/05/26 15:00
週刊BCN 2003年05月26日vol.991掲載
学校へのパソコン普及が進む一方で、教員や子供らが授業などで使う学校向け教育ソフトの普及が遅れている。現在学校に流通しているCD-ROM形態のソフトは、価格が高いなど敬遠される傾向にある。こうした現状を打開しようと、総務省は6月から、ネットワーク上でコンテンツを提供・課金するシステム「EduMart構想」の実証実験を本格開始する。同省は「この構想に基づき流通システムが確立されれば、教育ソフト市場は活性化する」と見込む。もはや、「国主導」でなければ動かないほど冷え切ったといわれる市場は、この構想で生き返るのか。実験の成否次第では、ネットから教育素材を取り出し授業に活用する時代が訪れ、教育ソフト界に“流通革命”が生じそうだ。(谷畑良胤●取材/文)
コンテンツに従量課金
■「今ひとつ普及していない」
学校向けの教育用ソフトウェアは、パッケージ化されたCD-ROMを中心に流通している。「その市場規模やソフト開発を手がける会社の数、販売シェアは不明」(森田和夫・日本教育工学振興会事務局次長・研究部長)だが、価格や流通などの問題があり、「今ひとつ普及していないのが現状」(清水康敬・国立教育政策研究所教育研究情報センター長)のようだ。
清水センター長は、EduMart構想の立案母体「EduMart協議会」の会長でもあるだけに、どうやらこの現状分析は、教育ソフト会社の多くが抱える共通の悩みでもある。
2001年6月に策定された「e-Japan 2002プログラム」が具現化すれば、05年度(06年3月末)までに、すべての公立学校が高速・常時接続のインターネットに接続される。
インフラ整備が急ピッチで進む一方、この環境での教育用コンテンツの普及を促進させることが学校の至上命題となっている。
これらを受け、「国がトップダウンでコンテンツ普及に乗り出した」(三木学・総務省情報通信政策局コンテンツ流通促進室主査)のが、デジタル教材を著作権上で適正に管理し、ネットワークを介して提供する試みである今回の「EduMart構想」だ。
■学校ではハード整備が優先
ソフトを販売するコンテンツ流通プラットフォームには、内田洋行とNTTエデュケーショナルイニシアティブ(NTT-EI)の2社が名乗りを上げ、個別にプラットフォームを構築。そのハードウェアやコンテンツ保護の暗号技術などはNECが受け持ち、両プラットフォームにはそれぞれ15社程度の教育ソフト会社が自社コンテンツを提供する。6月から全国8地域(小中学・高校100校)で実証実験が始まる。
従来のパッケージ販売では、「ソフト開発の『固定費』がかさみ、売価が割高になっていた」(内田洋行・開発調達事業部商品企画第2部開発3課の青木栄太氏)という。
今回ネットワーク上での販売スキームが確立されれば、「パッケージや説明資料の印刷代、CD-ROMの在庫管理にかかるランニングコスト、郵送代などが削減でき、ソフト代を現状より安くすることができる」(同)と、ソフト会社の“悩み解消”は一目瞭然のようにも思える。
実証実験ではまず、学校で使うデジタル教材(従来のCD-ROMを含む)を、教員や子供などのユーザーが適切に検索・抽出できるプラットフォームを構築する。
地方の教育委員会は、そこにあるコンテンツをネット経由で自前のサーバーに取り込み、各学校に配信する。その利用頻度(従量課金)に応じて料金がソフト会社に渡る。両プラットフォームは著作権管理や認証・検索、効率的なコンテンツ配信のあり方を1年間で検証する。
しかし、今回の実証実験に対しては、教育ソフト会社の慎重な姿勢が目立つ。
プラットフォームに自社のソフトを提供するNECインターチャネルの大島俊哉・コンテンツ・クリエイション事業部エデュテイメントグループエキスパートプロデューサは、「本当にこのシステムが学校に受け入れられるのか、今年度1年間で見極めたい」とする。ラティオインターナショナルの小林次郎・コンテンツ事業部営業企画室室長も、「受け入れる側の学校のインフラ環境がまだ完全でなく、ここ1、2年は従量課金などの販売にも疑問を感じる」と距離を置く。
学校の教育ソフトは、基本的に地方交付税措置で、教育委員会が十分に予算化しないと購入に至らない。
文部科学省では積算基準として財源措置をしているものの、「学校ではハード環境の整備が優先され、ソフト購入は後回し」という現状が、教育ソフト会社を尻込みさせる要因となっているようだ。
今回プラットフォームを構築する2社は、いずれも来年度にこの販売システムを事業化し、収益を上げる計画。仮にこの実証実験が一定の成果を上げれば、これまで教育ソフトの流通に寄与していた地場の販社などを巻き込み、一種の“流通革命”が起きるのは必至だ。
学校へのパソコン普及が進む一方で、教員や子供らが授業などで使う学校向け教育ソフトの普及が遅れている。現在学校に流通しているCD-ROM形態のソフトは、価格が高いなど敬遠される傾向にある。こうした現状を打開しようと、総務省は6月から、ネットワーク上でコンテンツを提供・課金するシステム「EduMart構想」の実証実験を本格開始する。同省は「この構想に基づき流通システムが確立されれば、教育ソフト市場は活性化する」と見込む。もはや、「国主導」でなければ動かないほど冷え切ったといわれる市場は、この構想で生き返るのか。実験の成否次第では、ネットから教育素材を取り出し授業に活用する時代が訪れ、教育ソフト界に“流通革命”が生じそうだ。(谷畑良胤●取材/文)
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