その他
企業向け IPv6 本格導入期へ
2003/08/11 15:00
週刊BCN 2003年08月11日vol.1002掲載
ユビキタス社会の基盤と期待される次世代インターネット技術、「IPv6」の企業向け導入が1年後から本格化する。大手ITメーカーなど先行組は、インフラ回りの「準備段階」にほぼメドをつけた。残された課題として、ネットワークなどを企業の要望に応じIPv4からIPv6にどう移行するかに議論は集約されつつある。システムインテグレータのIPv6に対する注目度も、このところ高まる一方だ。パソコンだけでなく、情報通信や各種デバイス、企業のビジネスプロセスなどの分野で新たな事業を創出しそうなだけに、日本の企業連合が世界に先駆け築き上げた技術は、“新ビジネス”の潮流を生みそうだ。
“新ビジネス”の潮流が見えた
企業向けIPv6のシステム構築に関する取り組みで先行する富士通、日立製作所、NECの3社はいずれも、2004年後半から05年頃に、IPv6対応の案件が急速に増えると予測する。
富士通は、「すでに企業向けのシステム構築では、すべてIPv6を使った提案をするよう徹底している」(是友春樹・ネットワーク事業部技師長)段階にあり、IPv6によるシステム再構築の優位性が、次世代の社内環境整備をにらむ企業の情報システム担当やシステムインテグレータに認知されたとの感触を得ている。
NECは8月7日、IPv6技術とそれを搭載したルータを結集させた「IPv6マルチキャスト映像配信ソリューション」を、企業向けに販売開始した。「来年からIPv6が企業に導入されるのを見越した製品」(阪内秀記・ビジネス開発本部エキスパート)だ。
同製品は、テレビ会議や業務に必要な映像の配信を可能にし、機密情報や大容量情報もすばやく配信できる企業環境を提供。この時期のリリースは、OSやルータ、ネットワーク機器など、インフラの基本的な技術開発が終了し、「機は熟した」(同)と判断したためだ。
官公庁や民間企業関係者、有識者らによる任意団体「IPv6普及・高度化推進協議会」(村井純会長=慶應義塾大学教授)が5月に設置した「移行に関する分科会」(荒野高志主査=インテック・ネットコア専務取締役技術本部長)は、IPv6の企業導入で残された数少ない課題である「移行方法や導入による直近のメリット」をテンプレート(ひな型)にして、年内に報告書にまとめる。
同分科会は、ITメーカーや通信キャリアなど大手8社による協議であるため、「これが1つの象徴となり、IPv6を生かしたシステム構築が一気に進む」(荒野主査)と、期待を込める。
IPv6に対応したルータやスイッチなど、ハードウェアを含む開発・研究投資を最も精力的に行う日立は、「IPv6のシステム提案では、ROI(投資対効果)が説明しづらかった。だが、ようやく事業として立ち上げられる見通しが立った」(高瀬晶彦・IPソリューションセンタセンタ長)と、同分科会など最近の動向を評価する。
日立は、IPネットワーク事業全体で05年度(06年3月期)には、大企業や自治体のIPv6導入を中心に、事業規模を03年度(04年3月期)に比べ30%以上拡大するとして、関連子会社のSE(システムエンジニア)などの技術力強化を始めた。
IPv6の導入では、OSやアプリケーションソフト、ネットワーク機器などをIPv6対応に更新する必要がある。昨年末からは、UNIXやLinix、ウィンドウズXPなど新版OSが、ほとんど標準でIPv6スタックを実装している。
企業が独自に発注した基幹システムの業務ソフトは、IPv6移行に困難な点が多いものの、全面更新までは「トランスレータ技術」を用いた接続を確保できる。導入当初は、パソコンやネットワーク機器などにIPv4とIPv6の両方を共存させる技術「デュアルスタック」を用い、数年かけて全面移行する方式が、過渡期的な導入方法として有力だ。
富士通は今年に入り、神奈川県川崎市のネットワークテクニカルセンターを、IPv6機器の接続検証施設として機能を拡張。他社のネットワーク技術者も行き交う場として活用している。
導入前の提案から導入方法、機器の安定性までの条件整備が進み、IPv6の本格導入は目前に迫る。国内企業がタッグを組み、世界に先行する日本のIPv6技術が、企業インフラを革新する大きなビジネスの潮流を巻き起こしそうだ。今後は、インフラ以外での収益モデルをどう構築するかが次なるテーマといえる。
ユビキタス社会の基盤と期待される次世代インターネット技術、「IPv6」の企業向け導入が1年後から本格化する。大手ITメーカーなど先行組は、インフラ回りの「準備段階」にほぼメドをつけた。残された課題として、ネットワークなどを企業の要望に応じIPv4からIPv6にどう移行するかに議論は集約されつつある。システムインテグレータのIPv6に対する注目度も、このところ高まる一方だ。パソコンだけでなく、情報通信や各種デバイス、企業のビジネスプロセスなどの分野で新たな事業を創出しそうなだけに、日本の企業連合が世界に先駆け築き上げた技術は、“新ビジネス”の潮流を生みそうだ。
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