その他
大企業に浸透する「ITガバナンス」
2003/09/22 15:00
週刊BCN 2003年09月22日vol.1007掲載
情報システムを経営戦略に使う
経営戦略に基づいて情報システムを構築し、トップの意思決定によりITを運用する「ITガバナンス(統治)」が、国内大手企業を中心に拡大している。メインフレームが唯一のIT管理手法だった時代は、企業の情報システム担当者やシステムインテグレータの責任者が分権的にIT部門を担っていた。だが、そのマネジメントの主導権が経営者に移り始め、情報システムを業務で「使う」だけでなく、企業を競争優位への方向に導く「手段」へと変化している。
ガートナー・ジャパンによると、年商1兆円以上の国内有力企業の40%程度が、「ITガバナンス」を開始したという。今後も急速にこの比率が高まると推測したうえで、「システムインテグレータを単純に起用する時代は去り、企業がシステムインテグレータをコントロールする時代になる」(松原榮一・ジャパンリサーチセンターマネージングディレクター)と、主導権が逆転する事態を想定する。
日本アイ・ビー・エム(日本IBM)は昨年10月、企業の情報システムが経営との整合性を失っている現状をにらみ、プライスウォーターハウスクーパース(PwC)の日本法人を統合して「日本IBMコンサルティングサービス(IBCS)」を設立。IBCSは「こういう現象は、経営ニーズへのIT対応を遅らせている」(広報担当)として、システムインテグレータと協力し、企業の「ITガバナンス」の支援を開始した。
大手システムインテグレータが昨年あたりから相次いで「コンサルティング部門」を新設している。この動きは、企業の「ITガバナンス」が浸透してきたことと無縁ではない。日本ユニシスは今年6月、企業の情報システム構築の上流工程をコンサルティングする専任組織を設立した。同組織は、「ITガバナンス」の観点を取り入れた「ITコンサルティングサービスLUCINA(ルキーナ)」というシステム構築・運用・保守などの新事業を開始した。羽田昭裕・サービスビジネス開発本部メソドロジ&アーキテクチャ部長は、「電力・通信など大手企業から、自社のITガバナンスを支援して欲しいとの要請が増えていた」と話す。
一方、システムインテグレータを支援するベンダーも登場した。情報システムの稼動検証ツールを販売するマーキュリー・インタラクティブ・ジャパンは、米本社が今年6月に買収した米キンタナの「ITガバナンス製品」を年内にも販売する。同製品は、情報システム設計から開発・運用までの資金、期間、進捗状況を管理できる。同社は「このツールを使えば、企業のCIO(最高情報責任者)が経営戦略の転換期に的確なシステム変換ができる」(山中義晴社長)と、販売パートナーとなるシステムインテグレータの開拓を始めた。
「ITガバナンス」に注目が集まり始めたのは、「バブル崩壊」でIT投資凍結が進み、ITコストの費用対効果を見極める企業が増えたからだ。この時代に情報システム構築を繰り返してきた企業には、現在、経営戦略に役に立たない蕫無秩序なシステム﨟が多く存在する。この片棒を担いだシステムインテグレータは今後、無計画にインフラを増築するだけの営業手法を見直し、経営の観点から情報システムを構築できる営業への脱皮が求められる。むしろ、「そうした転換ができないシステムインテグレータは、早い段階で破綻する」(松原ディレクター)ことになりそうだ。 谷畑良胤●取材/文
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