その他
高度IT人材アカデミー
2003/10/20 15:00
週刊BCN 2003年10月20日vol.1011掲載
オープン系人材が絶対的に不足
IT基盤やIT産業を育成しても、有能なIT人材が不足していたら、結局は「東京の下請け」になるだけ――。「地場IT産業の育成」を提唱する麻生渡・福岡県知事が今年6月、こんな期待を込めNPO(民間非営利団体)法人として開講したのが「高度IT人材アカデミー(AIP)」だ。シスコシステムズの調査によると、エキスパート級のIT技術者は全国で300人程度。福岡県内ではわずか2人。そこで、IT基盤整備を進めている福岡県は、人材不足を解消するため、素早く手を打った。総務省や外資系ソフトウェア会社などの協賛・助成を受け、構想から2年でとんとん拍子にAIPが設立された。
AIPに協賛する日本オラクルの幹部は、「当初、オラクルのマスター制度をカリキュラムに加えてもらうことを期待した(講座として扱っていない)」というが、「もっと崇高なビジョンに感銘を受けた」と、賛同の理由を説明する。サン・マイクロシステムズの幹部も、「オープンソースを扱う技術者が日本には絶対的に少ない」として、AIPへの講師派遣や教材提供などの協力は必然的だったという。
AIPは、資格取得を目的とする従来型の教育機関とは異なる。知識だけでなく、実践力を高めるのが目的だ。基本的には、業務システムの最適化手法であるEA(エンタープライズ・アーキテクチャ)を採用した「電子県庁の共通基盤」を構築する福岡県庁のバックアップを受け、同県庁で使用されるシステム調達に必要なRFP(提案要請書)などを「教材」に講義が進む。同じく、オープンプラットフォームで共通基盤の構築を目論む佐賀市は、「とても地元で共通基盤を構築できるIT人材は育てられない。AIPへ積極的に人材を送り込みたい」(松尾邦彦・情報政策課IT推進係長)と、オープン化が波及しそうな九州圏域では、期待大だ。
現在、育成コースは、(1)高度なオープンネットワーク技術者を目指す「基幹エキスパート」、(2)低リスクなIT環境をオープンシステムで実現する「ソリューションエキスパート」、(3)企業・自治体のIT調達・活用の中枢人材となる「ITプロジェクトマネージャー」――の3つを提供。講座は1か月半程度のeラーニングと、金、土、日曜日(1日講習)を使い延べ1か月の講義・演習を行う。
各コースには、地場IT企業の幹部候補生や、インターネットデータセンター(IDC)運用者、東京圏に本社を持つIT企業のSE(システムエンジニア)ら約100人が受講。10月下旬には、各コースの修了者から選抜した10人が「統合演習講座」に参加する。同講座では、ITの調達に関してライフサイクル全般にわたり最適化する手法を実際の案件の中で問題解析し、RFPをまとめる作業を共同で行い、修了と同時に地域経済活性化のITキーパーソンとして巣立つ。
AIPの佐々木雅志・事務局次長は、「AIPがIT技術者の交流拠点になった。異なる企業から来た人材による、新たなIT事業が生まれる可能性もある」と、予想以上の効果を喜ぶ。福岡県庁の共通基盤は、オープンプラットフォームだけに「高度なIT技術者が常時手を加えないと陳腐化する」(佐々木次長)恐れがあるため、AIPのような教育機関は不可欠な存在だ。自治体や企業のシステムにはオープン化の波が押し寄せる。IT人材が不足すれば、効果的なシステム構築は難しくなるため、こうした人材育成は急務だ。 谷畑良胤●取材/文
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