その他
ITスキル標準
2003/10/27 15:00
週刊BCN 2003年10月27日vol.1012掲載
まだまだ低い人材育成への意識
経済産業省がIT人材育成の活性化を狙いに、「ITスキル標準(ITスキルスタンダード)」を策定してから1年が経とうとしている。それにも関わらず、利用する側のIT企業の関心が一向に高まらない。経産省の動きは活発で、昨年12月の策定以降、今年7月にはバージョンアップ版を策定するとともに、普及促進および研究開発団体として「ITスキル標準センター」を設立するなど、質の向上や浸透に力を入れている。
経済産業省の平山利幸・商務情報政策局情報処理振興課係長は、「IT産業に関し、売り手から作り手まですべての分野をカバーしている」と、その内容に自信を見せる。ITスキル標準関連の研修サービスを手がける富士通ラーニングメディアの羽賀孝夫・研修事業部研修サービス部長も、「ITスキル標準関連のビジネスを今後の核として展開していく」と意気込む。
だが一方で、実際にIT事業を手がけるシステムインテグレータやソフト開発会社は、「知ってはいるが、具体的な中身まで知らない」との答えがいまだに大半を占める。「ITスキル標準」は、ITスキルについて国が定めた初の指標で、ITサービスの提供に必要な実務能力を指標として体系化している。カバーする範囲は広く、技術的な分野だけではなく、マーケティングやセールスなどの職種も含め計11職種、38の専門分野にカテゴライズ。それぞれの分野で能力レベルを7段階に分け、各個人がどのレベルにあるかを確認する指標となる。
ただ、ITスキル標準は単なる指標に過ぎない。各企業は自社の人材をITスキル標準と照らし合わせ、不足しているスキルはどこにあるのか、どのような対策を打たなければならないのかを独自に考える必要がある。平山係長は、「日本のIT業界は海外に比べ戦略的に人材育成を行ってきてないため、人材育成に対する意識もノウハウも乏しい」と指摘する。羽賀部長も、「商談の中で提案に興味を持ってもらっても、なかなか実需につながらない。人材育成に対する企業の予算が極めて少ない」と、人材育成に対する意識レベルの低さを嘆く。
企業側に活用の仕方を委ねている制度自体の蕫柔軟さ﨟が、逆に蕫人材育成音痴﨟の日本のIT企業に分かりにくさを与え、普及を遅らせている要因になっているのだ。平山係長は、「IT企業の商品はモノではなくサービス。それを提供するのは人にほかならない。各社員のスキルを管理・育成する取り組みが、企業の戦略そのものになる。『ITスキル標準』は、人材投資戦略を考えるための辞書だと考えてもらいたい。各企業の人材投資の動機付け、人材育成環境の土台として利用して欲しい」と訴える。
業界団体として初めて、11月から「ITスキル標準」関連の研修事業をスタートする情報サービス産業協会(JISA)の佐藤雄二朗会長(アルゴ21会長)は、「人材育成強化を重要なポイントとして捉えていない企業は確実に淘汰されていく。ITスキル標準を人材育成強化のきっかけにして欲しい」と強調する。IT企業における人材投資は、製造業における設備投資と同じではないだろうか。エンジニアやプログラマーはもちろんだが、各企業の経営陣がどのように人材育成を考え、ITスキル標準を活用するかがむしろ普及のカギになる。 木村剛士●取材/文
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