企業向けのオンラインビジネスが好調だ。日本アイ・ビー・エム（日本IBM、大歳卓麻社長）は、2003年度（03年12月期）におけるウェブサイト「ibm.com」の売上高が前年度比約15％増の400億円を達成。日本ヒューレット・パッカード（日本HP、樋口泰行社長）は03年度（03年10月期）、ウェブ販売「エイチピーダイレクトプラスオンラインストア」の売上高が同200％増と急成長を記録した。両社とも、ウェブと販売パートナー双方の強みを生かしたビジネスモデルの構築に注力。新規開拓や中堅・中小企業（SMB）市場での顧客拡大を図りつつある。直販で勢力を伸ばしているデルに対抗する狙いもある。

パートナー連携で成長軌道へ

　ウェブ販売やテレセールスを手がける日本IBMの専任組織「ibm.comセンター」は、パソコンやサーバー、ミドルウェアなど、同社が取り扱うハードウェア、ソフトウェア全製品を販売し、中堅・中小企業を中心に顧客数を増やしている。「ibm.com」自体の売上高は03年度実績で400億円だが、同サイトを通じて開拓した顧客先に販売パートナーが出向き、さらなるシステム提案につなげることで、「サイトとフェイス・ツー・フェイスを連携させたビジネスでは、1300億円の売り上げ規模になっている」（吉崎敏文・ibm.comセンター事業部長）と自信をみせる。

　04年度（04年12月期）は、サイトの顧客データをもとに、各顧客がどのようなニーズをもっているかを分析し、最適なハード・ソフトを顧客に提案することで「2ケタ成長」（同）を見込む。

　日本HPは、（1）オンラインストア「ダイレクトプラス」によるウェブ直販、（2）「ダイレクトプラス」専用の製品を販売するシステムインテグレータや大手ディストリビュータ40社以上で構成する「ダイレクトパートナー」、および1000社の代理店からなる「ダイレクトリセラー」を通じての販売──という2種類のビジネスを展開している。

　これまで、ダイレクトパートナーおよびダイレクトリセラー経由での販売を中心に、中堅・中小企業を顧客として開拓。結果、「03年度は前年度比200％増」（甲斐博一・パーソナルシステムズ事業統括eCommerce営業本部eCommerceマーケティング部長）と大幅に売上高を伸ばした。

　中堅・中小企業向けビジネスの全体売上高のうち、「ウェブ直販で20％、ダイレクトプラス専用のパートナー販売で30％を占めるようになった」（同）と、ダイレクトプラスがビジネスの柱になりつつあることを示す。

　03年度まではパソコンだけを販売していたが、今年1月からは低価格のサーバーやカラーレーザープリンタ、プロジェクタを追加。今後も、企業向けの製品カテゴリーを増やすことで、「2ケタ成長を継続できる」（同）基盤を作っていく。

　両社とも、ウェブビジネスの拡大に注力するのは、中堅・中小企業ユーザーを中心に新規顧客の裾野を広げていくためだ。

　日本IBMの吉崎事業部長は、「ibm.comセンターは、当社の営業担当者やパートナーがフェイス・ツー・フェイスでカバーし切れず未開拓地になっている“ホワイトスペース（未開拓ユーザー）”をオンライン販売で補う」ためのツールと位置づける。「最近では、『ハード・ソフトを単品で販売するだけのビジネスでは、利益にならない』という声をパートナーから聞く。サイトでの単品販売で新規顧客を開拓し、次のステップとしてパートナーがソリューションを提供、というビジネスモデルの構築を実現する」と強調する。

　日本HPの滝澤敦・執行役員イメージプリンティング事業統括は、「将来的には、中堅・中小企業の大半がハードを購入する際、メーカーからの直接購買に興味を抱く」とみる。甲斐・eCommerceマーケティング部長は、「ウェブ直販で顧客の声を吸い上げ、パートナービジネスの拡大につなげるのがダイレクトプラス」と位置づける。

　販売パートナーをもつ強みを生かしたビジネスモデルを構築することで、直販を武器にSMB市場で勢力を伸ばすデルに対抗する狙いもある。「細かい案件を大量にこなして次のビジネスにつなげる」（日本IBMの吉崎事業部長）、「ダイレクトプラスでは、価格競争力がある製品しか扱わない」（日本HPの甲斐eCommerceマーケティング部長）など、固定顧客の確保やパートナーとの信頼関係強化に注力していく方針だ。