その他
富士通がソフト・サービスで新会社
2004/04/26 15:00
週刊BCN 2004年04月26日vol.1037掲載
「システム開発工程の半減」なるか
商品原価率を毎年1ポイントずつ下げれば、営業利益が毎年500億円プラスされる──。富士通の黒川昭博社長は3月初旬、BCNの取材に対しこう語った。この発言から1か月後の4月1日には、グループの中核事業「ソフト・サービス」のテコ入れ策として、全額出資子会社3社を統合。「富士通アプリケーションズ」と「富士通アプリケーション開発」の2社を設立した。両社は、現在グループ各社などが扱うシステム開発の工程期間を2006年度(07年3月期)中に「半減」させる使命を負う。黒川社長の〝肝入り〟で生まれた賜物といえる。
富士通はここ数年、企業や自治体、官公庁のシステム開発で進んだ、開発工程の短期化や低コスト化の要求の波に乗り遅れ、ソフト・サービス事業の低迷を招いた。これに危機感を抱き、昨年11月、メインフレームで適用していた総合システム開発体系「SDAS(エスダス)」を、ウェブ系のシステム開発向けに刷新した。2社は、このエスダスをグループ各社や外部の協力会社にも浸透させる役割を担う。
2社を統括するソフト・サービス共通技術センターの薮田和夫・プロジェクト統括部長は、ハード・ソフト製品やプロジェクトを「レーシングカー」に例えて、2社の役目を説明する。「レース場で、レーシングカーをいかに早く走らせるかを担う『ピットクルー』」。いかに出来栄えの良いレーシングカーでも、実際に走らせないと「ビスの不具合やピット作業の問題などが分からない」。システム開発の最前線で、こうした作業をSE(システムエンジニア)が技術支援するのだという。
2社は、旧子会社3社のSEとグループ内の援軍も加え、約350人の人員を揃えた。2社のトップを兼務する渡辺純社長も、「グループ各社と協力会社の〝潤滑油〟となるのが当社」とし、「両社が単体で積極的に収益を生み出そうとするわけではない」と、曖昧な表現を繰り返す。2社の収益源は、SEがシステム開発の現場に行き、グループ会社や協力会社の受託開発を手伝った対価がメイン。だが、2社の研究費が多額になることは容易に想像できる。赤字覚悟の船出だ。
富士通は2社の目標売上高など、業績予想を公表していない。ならば、「会社ではなく、事業部でいいのでは?」との疑問が湧く。富士通の広報IR室は、「グループ各社や協力会社の先導的な役割を果たすため、1事業部としてではなく、明確な形で『会社』として独立する方が適切」と、迅速に事業展開をするために、会社設立という選択に至ったと説明する。
エスダスは、オープンソースの統合ソフト環境「エクリプス」やオブジェクト指向のソフト開発統一表記法「UML」、J2EEなど、国際標準に準拠したオープン技術を用いた開発体系。エスダスを適用すれば、どの協力会社も自社のアプリケーションやソリューションと組み合わせ、短期間でシステムを構築できるという。
富士通はかつて、ハード・ソフト製品をすべて自社製品で調達し組み立てる「垂直統合型」のシステム開発が特徴だった。しかし、刷新したエスダスにより、協力会社が積極的に富士通と共同のプロジェクトに参画できるよう門戸を開いた。薮田統括部長は、「03年度(04年3月期)の時点で、富士通が扱うシステム開発は前年度に比べ30%削減できた。今後は、失敗事例の解決策を現場にフィードバックする」と、自信を見せる。他の大手ITメーカーにこうした性格の会社はない。2社の動向は、他社からも注目されそうだ。 谷畑良胤●取材/文
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