その他
システムインテグレータの自治体ビジネス 顧客自治体数の減少は不可避
2004/05/17 15:00
週刊BCN 2004年05月17日vol.1039掲載
自治体ビジネスを手がける主要システムインテグレータの顧客自治体数が軒並み減少している。市町村合併の進展で自治体の絶対数が減少しているのが要因だが、たとえ顧客自治体数は減らしても、顧客自治体の規模が人口ベースで増えれば、電子自治体など次の商戦を有利に戦える。このため、人口数を念頭に置き自治体ビジネスを展開しようとシステムインテグレータ各社は躍起だ。だが、市町村合併という大波を前に、カバー人口を増やせるシステムインテグレータと、そうでないインテグレータとで明暗が分かれている。
獲得人口の増加に照準
顧客自治体数は確実に減少する──。自治体ビジネスを手掛けるシステムインテグレータは危機感を募らせている。
TKC(飯塚真玄社長)は、住民情報システムなどの基幹系システムを納入している顧客自治体数は昨年10月1日時点で258団体あるが、市町村合併が見込み通り進めば約半分に減ると予測する。日立情報システムズ(堀越彌社長)も顧客自治体252団体(3月末時点)のうち、合併が収束した段階で200団体を割り込む可能性を示唆する。日本電子計算(JIP、小倉勝芳社長)は、約100団体が60-70団体に減ると見る。
システムインテグレータ関係者は、「自治体が合併する際、情報システムを基準として見れば、どうしても規模の大きい自治体に小さい自治体が吸収される傾向にある」と指摘する。その結果、これまで人口数千から数十万人までの中小規模の自治体を主なターゲットとしてきたシステムインテグレータにとって、自治体ビジネスは厳しさを増す。
このため、大規模自治体をターゲットとする大手メーカーを追撃するかのように、有力システムインテグレータ各社は人口の多い自治体の基幹系システムを押さえる施策を相次いで打ち出している。たとえ顧客自治体数が減少しても、人口ベースでは以前よりも顧客規模を大きくさせたい考えだ。
TKCでは、基幹系システムの納入自治体が擁する総人口で、市町村合併が本格化する以前は約320万人だったのに対し、今年2月時点で約20万人増の約340万人に増やすことに成功した。TKCの寺内博之取締役は、「合併商戦が収束するまでにトータル人口で350万人以上の獲得を目指す」と、引き続き獲得人口の増加を狙う。
人口が増えた要因として、TKCではこれまで人口10万人以下の自治体をメインターゲットに商談を進めてきたが、合併商戦では人口50万人に対応する「.NET技術」をベースにした新しい自治体向けオリジナルパッケージシステムを提案。数十万人クラスの自治体向けの商談を有利に進められたことが大きい。
日立情報システムズでも、合併商戦前の基幹系システム納入自治体の総人口を100とすると、「最低でも120-130%」(増田勝二・自治体システム本部全国開発支援部第一設計支援グループ主任技師)を目指すとしており、同じく人口ベースでの規模拡大に力を入れる。
同社では、これまで人口10万人以上の自治体数は10団体程度だったが、合併商戦の収束後は20団体を超える見込みだという。日本電子計算においても、人口ベースで増加に転じられるよう商談を進める。
日本電子計算の松山清一・公共システム事業部事業戦略室長は、「顧客自治体の人口規模が拡大すれば、電子自治体システムなど次の商談に結びつけやすい」と、合併商戦の次の大型需要として期待される電子申請や公共部門のCRM(顧客情報管理)システム利用などで商談を有利に進められると指摘する。
電子申請などは、県主導による共同アウトソーシング方式が有力だが、「自治体の規模が大きくなれば、独自にシステムを導入する動きも活発化する」という見方もあり、どれだけの人口を持つ自治体を顧客に持つかで商談内容が大きく左右されるのは間違いない。
一方で、「人口50万人以上を大手メーカーが押さえ、それ以下を有力システムインテグレータが押さえる。合併しない中小自治体もあるものの、全体的には1自治体あたりの規模は大きくなる。これまで中小自治体をターゲットとしてきた中小システムインテグレータは、自治体ビジネスから撤退を余儀なくされるケースも出てくる」(業界関係者)と、“平成の大合併”との同時進行で、システムインテグレータの選別も進むと警鐘を鳴らす。
自治体ビジネスを手がける主要システムインテグレータの顧客自治体数が軒並み減少している。市町村合併の進展で自治体の絶対数が減少しているのが要因だが、たとえ顧客自治体数は減らしても、顧客自治体の規模が人口ベースで増えれば、電子自治体など次の商戦を有利に戦える。このため、人口数を念頭に置き自治体ビジネスを展開しようとシステムインテグレータ各社は躍起だ。だが、市町村合併という大波を前に、カバー人口を増やせるシステムインテグレータと、そうでないインテグレータとで明暗が分かれている。
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