その他
IPベースのシステム構築拡大
2004/08/02 15:00
週刊BCN 2004年08月02日vol.1050掲載
“PBXベンダーを救う”は大義名分?
大手ITメーカーはここにきて、企業の情報システム構築をIP(インターネット・プロトコル)ベースにシフトし始めた。昨年まで大企業向けが中心だったIPベースのシステム構築だが、今年に入って「情報と通信の融合」を掲げるNECと日立製作所が、6月になって相次ぎ中堅・中小企業向けのIPソリューションの提供を開始。米IBMと米シスコシステムズも6月、「IPセントレック・ソリューション」での協業を発表した。中堅・中小企業のIT投資が未だ低調ななか、「システム導入から短期間でコスト削減が図れ、その削減した資金を新事業に投入できる」ことをアピールしてシステム構築の需要を回復させようと、大手ITメーカーが必死になっている。特に国内大手ITメーカーが狙う中堅・中小企業市場は、IT投資の伸びが著しく鈍い。
IPベースのシステム構築ならば短期導入が可能で、従来のクライアント/サーバー型のシステム構築に比べ、通信部門で短期的なコスト削減策を打ち出しやすいメリットがある。「ビックバン導入」が不可能であれば、「通信網だけでも、まず固定電話からIP網に置き換える案件を獲得し、1、2年で予定通り通信コスト削減を実現させ、その後に利益率の高い基幹系の再構築の受注を狙う」(大手ITメーカー担当者)と、長いスパンで売り込みをかける戦略だ。従来の固定電話サービスは、1台数千万円のPBX(構内交換機)を持ち、メンテナンス費も1台年間百万円程度を必要とした。PBXはバージョンアップとともに数年ごとに償却され、買い替えていく必要性があった。だが、IP網の構築に必要なIP─PBXは1度導入すれば、メンテナンス費は安価で、大手ITメーカーが拡大を図っている電話システムと回線の運用を含めアウトソーシングする「IPセントレック・サービス」を利用すれば、電話の増設も安くて済む。
企業にIP網が普及しIP電話が一躍脚光を浴びたのは、2003年に東京ガスがIP電話を全社的に導入してからといわれる。当初、東京ガスは試算で「年間30億円の通信費を半減できる」として、実際1年後に予定通りコスト削減を実現。これらを契機に、NECや日立の販売パートナーなど、PBXの設置や社内電話網の構築、保守・サービスを担う音声系システム構築ベンダーは、需要低下で苦戦が始まった。通信関連に強みを持つNECと日立は、PBX関連のシステム構築ベンダーをそれぞれ数十社抱える。通信はかつて、両社の業績を支えてきただけに、「何としてもVoIPといった通信の強みを生かし、これらPBXベンダーを復興させたい」(NEC関係者)と、「情報と通信の融合」戦略を打ち出した胸の内を明かす。
ただ、NECや日立には、「PBXベンダーを救う」という大義名分のほかに、「別の思惑もある」と、ある大手システムインテグレータ幹部は言う。「PBXベンダーであれば外資系メーカーから調達してIP─PBXを簡単に製品化でき、IPセントレック・サービスの拡大は可能」(同)。NECや日立は、こうした新興勢力が世に登場する前に、芽を摘んだとの指摘だ。こうした背景があるにせよ、「IP網に合う業務系で、ISV(独立系ソフトウェアベンダー)などから、協業の依頼が相次いでいる」(NEC幹部)と、IPベースのシステム構築の成否を分けるといわれる業務系アプリケーションの充実は、思いの外進展中だ。急速に進むIPベースのシステム構築への流れ自体は、拡大する勢いを見せている。(谷畑良胤●取材/文)
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