その他
ハード機器にも影響?米の著作権強化法案 不正コピー撲滅が狙い
2004/08/02 15:00
週刊BCN 2004年08月02日vol.1050掲載
PtoP技術などによるデジタルコンテンツの不正コピーを撲滅しようと、著作権侵害を誘発した者まで罪に問うことのできる法案が米国で審議されている。原案通りに著作権法が強化されれば、MP3プレーヤーなどのハード機器メーカーまでが著作権侵害ほう助の罪に問われる可能性があるとみられており、日本メーカーにとっても大きな問題になりそうだ。
問題の法案は、米連邦上院議会で審議されている「著作権侵害誘発法案」。著作権を侵害した者だけでなく、侵害を誘発した者までも罪に問うことを可能にする法案だ。PtoPや、ファイル交換ソフトの開発者を罪に問うことのできる内容になっており、違反者は罰金刑、禁固刑に処せられるという。
米国では、連邦第9巡回裁判所が2001年に、ファイル交換サイトのパイオニアであるナップスターを違法とする判断を下したが、03年には、ロサンゼルス連邦地裁が「ナップスターのように中央で管理されていない」との理由でファイル交換技術のストリームキャスト・ネットワークスを合法であると判断している。今回の法案は、そうした司法判断の揺れをなくし、ファイル交換サービスを大きく制限しようというものだ。
一方、同法案の反対者によると、同法案は文言が抽象的で、ビデオデッキやDVDプレーヤー、MP3プレーヤーなども著作権侵害を誘発する技術とみなされ、そうした機器のメーカーまでが罪に問われる可能性があるという、
ソニーのビデオデッキが映像コンテンツの不正コピーを誘発しているとしてユニバーサル・シティー・スタジオがソニーを訴えた裁判で、ビデオデッキのユーザーの大半が合法利用者であることからソニーを著作権侵害ほう助の罪に問えないと最高裁が1984年に判決を下している。今回の法案は、その判決さえ覆す可能性があるという。
今回の法案は、支持派と反対派に米国世論が大きく分かれている。支持派には、民主、共和両党の有力議員が名を連ねているほか、ゲームソフトの業界団体である米娯楽ソフト協会(ESA)をはじめ、アドビシステムズやオートデックなどで構成するビジネスソフト・アライアンス(BSA)、米レコード業会(RIAA)などの業界団体も支持を表明している。また最近では、米連邦著作権登録局も支持を表明した。
支持派の主張は明白。ファイル交換サービスは著作権侵害行為の温床になっているにもかかわらず、現行の著作権法で規制できない状態。それならば新しい法律が必要だということだ。
一方、反対派には、イーベイ、グーグル、インテル、サン・マイクロシステムズ、ティーボ、ヤフーをはじめ電話会社大手のMCI、ベリゾンなどのIT企業が名を連ねている。
反対派の主張は、ナイフのメーカーを殺人ほう助罪に問えないのと同様に、ファイル交換の技術や、ソフト、ハードのメーカーを著作権侵害ほう助の罪に問えない、というもの。また法律で厳しく規制してしまうと、さらなる技術や新しい産業の促進を阻害してしまうという主張もある。
この主張のオピニオンリーダー的存在になっているのは名門スタンフォード大学のローレンス・レッシグ教授。
同教授によると、映画産業の黎明期には映画に関連する技術の特許保有者のほとんどは、当時の米国経済の中心地である東海岸に住んでいた。一方で映画の可能性に魅せられた俳優や脚本家などのクリエーターたちは、特許保有者から同国内で最も離れた西海岸のハリウッドに集まることで、特許使用料を支払わずに試行錯誤で映画をつくり続けることができたという。
同教授は、現行の著作権法を強化すれば新しい技術、産業を阻害するとしており、著作権法強化の代わりにファイル交換などの技術に対応できるような新しい考え方を著作権法に導入すべきだと主張している。例えば、デジタルコンテンツを低額でレンタルする形にし、1回の利用ごとに課金するなどの新しい仕組みをつくり、コンテンツ利用を制限するより促進することで著作権者の利益を確保すべきだとしている。
同法案の支持者で共和党有力議員のオリン・ハッチ上院議員は、同法案を推進する方針に変わりはないものの、議論の高まりを受け「反対派の意見にも耳を傾ける」との姿勢を示している。同法案が最終的にどのような形になるのかは、今後の議論の行方に大きく左右されそうだ。(湯川鶴章)
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