その他
米では関心低いMSのクロスライセンス問題 “遠いアジアでの出来事”
2004/08/09 15:00
週刊BCN 2004年08月09日vol.1051掲載
日本の公正取引委員会が、マイクロソフトに行った排除勧告は日本国内では大きな話題として取り上げられた。しかし、米国ではメディア・IT業界を問わず、事実上の無関心であり、この問題に対する関心の度合いには日米で大きな温度差があるようだ。米国でのこの問題の捉えられ方は、一体どのようなものなのか。
7月13日、日本の公正取引委員会は、マイクロソフトが製品を提供する際にパソコンメーカー各社と締結する契約内容に独占禁止法に違反する部分があるということで、同社に対し排除勧告を行った。
この契約は「クロスライセンス」と呼ばれるもので、IT分野に限らず多くの業界で締結されている。今回の排除勧告は、多くの部品が集まって製造されているパソコンという製品が対象になっていることで、IT関係業種に大きな影響を及ぼす可能性も秘めている。
ところが今回の件に関して、米国のIT業界はほぼ無反応であり、全く関心がないかの様にも見える。日本での問題の捉えられ方との間に、いささかの隔たりが見えるのである。
実は公正取引委員会は、この勧告以前に既に今年の2月にマイクロソフト日本法人への立入り検査を実施している。従って、マイクロソフトをはじめとする関係者には今回の勧告までには4か月以上の猶予があった訳で、それぞれ対応策を練るには十分余裕があったことが彼らの静観の理由の1つだ。
また、マイクロソフト自身も、公正取引委員会からの指摘と時を同じくして、問題の条項を削除するなど、迅速な対応をとっている。
一方の公正取引委員会側も、当初は独占禁止法3条前段の「私的独占の禁止」に違反の可能性が高いとしていたが、その後同19条の「不公正な取引方法」を適用するなど、若干のトーンダウンとなったことも、業界の過敏な反応を呼び起こさなかった要因と言える。
マイクロソフトは排除勧告後に公式のプレスリリースを発表し、取りあえずは遺憾の意を表してはいるものの、その論点はこれまでの契約について述べているのみであり、今後この問題に関して強硬に自社の意見を推し進める考えはないようだ。
実はこの問題、米国メディアでは、今回の「指摘」は米国以外の海外のパソコンメーカー、具体的には日本のパソコンメーカーとアジアのクローンメーカーからの要請によるものと推測されている。
同様の査察がCPU大手のインテルにも行われたことも状況証拠として挙げられており、更には公正取引委員会がソニーやNECなどの日本のメーカーに聞き取りを行ったことと併せ、「実質的な非関税障壁の設定ではないのか」という非難も一部から出てきている。
つまり今回の1件は、米国の大手の連合であるいわゆる“ウィンテル”に対して、今後は強硬な姿勢をとっていくという日本側の姿勢変化の現れと見られているのだ。
また、日本側の動向はマイクロソフト側にも十分伝わっていたようで、マイクロソフトの契約書から問題の条項が削除されたのは、日本の公正取引委員会が同社への立ち入り検査を行ったわずか数日前と、情報収集にはかなり力を入れていることを伺わせるものである。
米国では、この種の問題に関しての法的解釈は以前より非常に明確になっている。今回の1件も、米国内であれば、マイクロソフト側に非があるとは見なされない可能性が高いという。
従って米国内のIT業界各社は、「今回の問題はあくまで日本での出来事」として、とくに留意する必要はないものと判断しているのだろう。
更にマイクロソフトは、ヒューレット・パッカード(HP)やシスコシステムズなどの大手IT機器メーカーと一層複雑なクロスライセンス契約を締結しており、彼らとの提携が実を結べば、日本での排除勧告などは取るに足らないと考えている節もある。
ニューヨーク在住のIT分野専門のある弁護士は、「この1件は米国では“遠いアジアでの出来事”として捉えられているだけだろう」と話している。やはり米国では今回の1件は些末事として捉えられているのが実状だ。(田中秀憲)
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