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蘇る巨象、シスコシステムズ 新型ハイエンドルータを発表
2004/08/23 21:12
週刊BCN 2004年08月23日vol.1052掲載
IT業界のバロメーターとして動向に常に注目が集まるネットワーク機器最大手のシスコシステムズ。同社は2004年度(04年7月期)の第4四半期(5-7月)決算で前年同期比41%増益を計上し、営業利益も過去最高の13億8000万ドルを達成した。巨象を復活に導いたことで評価が高まる同社のジョン・チェンバースCEOの次なる野望とは。
「これは次世代のインターネット利用を可能にする製品だ」とチェンバースCEOが太鼓判を押すのは、シスコシステムズが4年の歳月をかけて開発した新型ハイエンドルータ「CRS-1(キャリアルーティングシステム-1)」だ。
バブル不況の最中も投資を切り詰めず、総勢500人、開発費5億ドルという社史始まって以来の莫大な予算を投じて完成させた意欲作で、「20年前にルータが登場して以来の画期的な技術革新」と同氏は語る。
シスコシステムズは次代を担う重点分野としてワイヤレス技術とインターネット電話に特に力を入れているが、キャリアクラスのルータでは2年前にT640を世に出したジュニパーネットワークスに先を越されている。
ジュニパーは昨年末にも国防総省に約1億ドル相当の中央ルータを納入するなど大型契約を次々落としている。CRS-1は、このT640の勢いに対抗する製品だ。
転送速度毎秒40ギガビットの光インターフェイスを支援するルータとしては世界初。7月1日には「世界最高の通信速度(92兆ビット)をもつルータ」としてギネスブックにも載った。
「92テラビット」と言うと、例えば米国会図書館所蔵の印刷物1億2800万点の全ダウンロードが普通のダイヤルアップモデムなら82年かかるところ、たったの4.6秒で済んでしまう。余りのキャパに社の内外でも当初は「そんなもの誰が要るもんか」と笑われたらしい。
開発コード名「HFR」は正式には「Huge Fast Router(でかい高速ルータ)」。だが、消費電力が大きくシスコのビル1棟の配電設備を何度もアップグレードしなくてはならなかったことから、社員の間では「Huge Fucking Router(クソでかいルータ)」と親しまれている。
気になるのは売り込み先だ。今年5月に行われた記者発表の段階では、既に共同開発に加わっている米スプリント社以外、特に導入に前向きな反応を見せたキャリアはなかった。製品がまだテスト段階で安定性が不十分ということもあるし、参考価格45万ドルからで導入費用も馬鹿にならない。しかもチェンバースCEOは事あるごとに「IP電話がいずれは既存の電話に取って代わる」という自らのビジョンを披瀝して回ることで知られた人物だ。「おたくの業界は先がやばい」という趣旨のことを言われて平気でいられる社長はいない。
実際そのことで心証を害した電話会社のトップ陣からの抗議を受け、同CEOは過去に何度か謝罪した経緯もある。すんなり受け入れてもらうまでにはまだまだ時間がかかりそうだ。
ところで「会社が復活するまで年棒1ドルで働く」と01年4月に宣言したチェンバースCEOは、01年から従業員1万人のレイオフ、製品ライン2割削減、在庫20億ドル分の評価損計上、製品再設計によるサプライヤー60%削減などのスリム化を断行し、巨象シスコを見事蘇らせた立役者である。同社は現在、純利益で過去最高水準を回復している。5-7月期は売上高も59億3000万ドルで前年同期比26%増。株価は1株80ドルのピーク時水準には届かないものの20ドル前後で、ハイテク主要銘柄では絶好調のデルや社内粛清のヒューレット・パッカード(HP)、IBMなどをおさえて首位をキープしている。
今回の好業績を受け同CEOの年棒は無事35万ドルの過去水準に戻った。もっとも無給の間もストックオプションは相変わらず渡されており、これを将来行使すれば数千万ドル分にはなる。
電話機器サービス分野は米国内だけで年間7500億ドル相当という大きなパイ。今後CRS-1のようなハイエンド大型ルータに対する需要は年間20%を上回る急激な勢いで拡大が予想され、10年後には今の25億ドル市場から200億ドル市場に化けるポテンシャルをも秘めている。
辣腕のチェンバースCEOがどう取り組むのか。今後を見守りたい。(市村佐登美)
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