その他
マイクロソフトと北海道の提携
2004/09/06 15:00
週刊BCN 2004年09月06日vol.1054掲載
オープンソース対抗の“防波堤”築く
「これほどのチャレンジは世界で初めてだ」──。6月下旬に来日した米マイクロソフトのスティーブ・バルマーCEOは、北海道との「フロンティアベンチャー育成プロジェクトwithマイクロソフト」の提携発表会で、こう豪語した。国内の自治体関係では、岐阜県や大分県などと組みベンチャー支援をしているが、北海道ではこれらに加え、公的な高等教育機関向けにマイクロソフトのベンダー資格取得を支援する。米マイクロソフトが公的教育機関を支援するのは北海道が初めて。特定の地域にここまで肩入れするのは世界的に異例という。
北海道は、IT業界でオープンソースソフトウェア(OSS)陣営の集積地として知られる。北海道も電子自治体の基幹システムなどをOSSベースで検討したこともあったほか、03年頃からはOSSコミュニティがソフトベンダーらによりいくつか組織されている。マイクロソフト日本法人の幹部は、「北海道との提携は、OSS陣営が他の地域に広がるのを防ぐのが1つの目的」と、国内ばかりか、Linuxが浸透する東アジアへの進出を食い止める〝防波堤〟を築く狙いがある。
今年2月には、札幌市と韓国の大田(テジョン)市が経済交流で覚書に調印。両市は、北海道大学や「サッポロバレー」のIT企業が、札幌やソウル、上海などアジアを情報産業集積都市が連携し交流する「eシルクロード事業」に乗せ、経済交流を活発化させようとしている。札幌市内のIT企業幹部は両市の交流について、「システム構築やソフト開発の分野では、OSSを中心に交流が進むだろう」と見る。
昨年11月に認可されたNPO(特定非営利活動)法人「北海道オープンソース&セキュリティ」には、「道内のIT企業より早く、NPO認可と同時にマイクロソフトから会員登録の申請があった」(事務局担当者)と漏らし、首をひねる。マイクロソフトは参加を表明しただけで、まだNPO法人の活動に具体的な参加はしていない。焦りなのか?北海道が、マイクロソフトにとっていかに死守したい土地であるかということを示していると言えないだろうか。
北海道内では、事実、マイクロソフトのパートナーが危機感を募らせている。札幌市の基幹システムを担当し、.NETを推進する日本ユニシスの幹部は、「中国と韓国に近い九州の自治体が福岡県を中心にオープンソースに傾注。九州と東アジアのLinuxが相互交流し始めた。北海道でOSS陣営を食い止めないと、九州で起きていることの二の舞になる」と、危機感を強めていた。北海道とマイクロソフトの提携が強力なバックアップとなりそうだという。
米マイクロソフトの昨年度(2004年6月期)の売上高は、前年度に比べ約14%伸びた。だが、世界の他地域に比べ、東アジア地域の伸びは鈍かった。この傾向を食い止める1つの施策として、北海道との提携は試金石となるが、まだまだ不安材料は多い。国内では経済産業省が昨年度から「オープンソースソフトウェア活用基盤事業」を開始。海外では、中国でLinuxを利用した独自OSの開発や日中韓3国でOSSの開発・利用の研究が国レベルで進むなど、東アジアは今後もマイクロソフトが劣勢を強いられる可能性の高い地域なのだ。北海道経済産業局によれば、道内IT企業1社あたりのLinuxとUNIX技術者数は16・8人で、国内では関東、中国地方に次いで比率が高い。マイクロソフトが長期的なスパンで、北海道の人材育成を支援するのは当然かもしれない。(谷畑良胤●取材/文)
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