確実な利益確保が狙い

　BTO（受注生産方式）パソコンの拡販を図るパソコン専門店および家電量販店が増えている。

　ソフマップは、ノートパソコンで「我流工房」というブランドを使って、11月からBTOパソコンの販売を開始した。6種類の筐体を用意し、メモリやCPU、ハードディスクドライブなどをユーザーが選択できる。ユーザーが選んだ仕様のパソコンをショップのスタッフが組み立てるだけでなく、筐体やパーツ類をユーザーが持ち帰って組み立てることも可能。近く店舗内でユーザー向けに組立スペースの設置やイベントなどを実施する予定だ。

　現段階では、東京・秋葉原の「東京・秋葉原1号店Chicagoパソコン・デジタル館」1店舗のみの販売であることから、「1か月平均で100台程度の販売台数が目標」（松田信行・総合企画部広報・IR室長）と控えめ。しかし、「ユーザーが増えれば、取扱店舗数を増やしていく」と、販売台数を引き上げる準備を進めているようだ。

　アロシステムでは、同社が運営するBTOパソコンショップ「パソコン工房」を出店していくことに加え、家電量販店内で展開する形態のビジネスモデルを本格化する。このほど複数の家電量販店とのアライアンスに漕ぎ着けた。「パソコン工房の〝ショップインショップ〟でブランド力の向上につなげる」（大野三規社長）と、新規ユーザーの開拓に力を注ぐ。ピーシーデポコーポレーションは、今年4月下旬からBTOパソコン「オッジオ」の販売に着手しており、販売台数を2004年度（05年3月期）に4万台、05年度で10万台に伸ばす計画だ。

　ショップがBTOパソコンビジネスに乗り出したり、ここにきて事業拡大を進めるのは、自分に適したパソコンを購入するユーザーが増えていることにほかならない。

　ソフマップの松田室長は、「組立用パソコンパーツでアセンブリを行いたいというユーザーが増えている。しかも、持ち歩けるノート型で自分ならではのパソコンが欲しいというニーズが多い」と、ノートパソコンのBTOビジネスを手がける理由を話す。

　ピーシーデポの野島隆久社長は、「店舗でコンサルティングから組み立て、メンテナンスなどを行う〝店頭ダイレクトBTO〟は、ウェブによるダイレクト販売やホワイトボックスのビジネスモデルの良い部分をできるだけ取り入れている」という。アロシステムでも、「パソコンの便利さをパソコンを使わない人たちに訴えるためには、ユーザーそれぞれにとって使いやすいパソコンが必要だ」と言い切る。

　しかも、価格の安さがユーザーのパソコン買い替え意欲を煽るカギであることから、収益を伸ばすにはパソコンメーカーの利益を乗せずに済むオリジナルモデルの方が優位。BTOモデルではないものの、ホワイトボックスによるオリジナルモデルを販売するショップが増えているのも、パソコンビジネスで利益をあげるという狙いがある。

　ショップブランドのオリジナルパソコンが増えることで問題になってくるのがパソコンの低価格化。アロシステムの大野社長は、「オリジナルパソコンを扱う専門店や量販店が増えたことで、BTOパソコンでも低価格を求めるユーザーが多くなった。価格競争が激しくなるのは確実だろう」とみている。

　しかしその一方で、競合との差別化を図るためには、自社ブランドのオリジナルモデルが重要なアイテムになる。加えて、機能面でユーザーニーズに応えるには、BTOパソコンが適している。価格競争が激しくなったとしても、パソコン販売でショップがBTOビジネスを始める傾向は、ますます高まるだろう。(佐相彰彦●取材／文)