高効率でビジネスを回せ

　高い効率でビジネスを回したシステムインテグレータが業績を伸ばす──。2005年のキーワードとして、システムインテグレータ幹部は異口同音にビジネス効率アップの必要性を挙げる。なかでも中堅企業を顧客ターゲットとするシステムインテグレータは、対象となる顧客数が多いだけに、生産性を高めるビジネスモデルの確立が急務だ。

　日立製作所は、年商20─500億円規模の中堅企業は全国で約7万5000社あるとし、マイクロソフトはシステムインテグレータなどに情報システムを発注している従業員数100人以下の中小企業は全国で約166万社あると推測する。

　こうした中堅・中小企業（SMB）は、一見すると数が多いように思える。しかし、一般コンシューマ向けのビジネスに比べれば、遥かに数は少ない。

　コンシューマを顧客ターゲットとする企業にとって、ITを活用して顧客1人ひとりの消費傾向を分析するワンツーワンマーケティングは、すでに常識となった。例えばデルは、ITを活用したワンツーワンマーケティングの手法を取り入れて、いわゆる「デルモデル」を作り上げた。

　あるベンダー系の大手システムインテグレータは、「顧客先に足繁く通う営業ばかりが目立つ。軍隊で例えれば歩兵だけで戦っているようなもの」（経営幹部）と、自らのビジネススタイルを見直す必要があると話す。

　情報システムを提供する側であるはずのシステムインテグレータが、一般コンシューマに比べれば、はるかに少ない数の顧客企業に対して高いレベルのワンツーワンマーケティングがなかなか実現できていないのが実情である。

　このシステムインテグレータでは、ITを活用したワンツーワンマーケティングは「空中戦を展開する空軍」で、セミナーやショールームのように商材を体験してもらう拠点を「海軍基地」のようなものだと位置づけ、新年度からは「陸海空」が密接に連携したビジネスを展開する準備を進める。制空権、制海権をしっかりと握った上で、最後に歩兵が出向き確実にクロージングに結びつけるビジネスモデルを再度構築し直すことで、ビジネス効率を高めるというわけだ。

　効率良くビジネスを展開するうえで、もう1つ欠かせないのが業務アプリケーションの提供方法である。ここ数年で、業務アプリケーションのコンポーネント（部品）化が急速に進んだ。

　カスタマイズなど融通の利きにくいパッケージ製品ではなく、システムインテグレータ自らが業務アプリケーションのコンポーネント化を進め、顧客の業務の変化に合わせて、柔軟に速く情報システムに反映する仕組み作りが盛んだ。

　ひと昔前なら、異なる顧客で似たような業務アプリケーションを受注した時でも、それぞれゼロからソフトウェアを開発した方が「売り上げが立った」（システムインテグレータ幹部）という。

　しかし、これではビジネス効率が悪い。仮に案件単価が下がったとしても、顧客1社1社の需要動向を的確に把握し、業務の変化に合わせて要望を素早く、かつ安価に情報システムに反映するビジネスモデルの確立が求められている。

　世界全体の情報化、ユビキタス化などにともない顧客企業のIT投資の意欲は厳然と存在している。営業手法から製品開発、受注方法の在り方すべてにおいて、最もスピードの速いビジネスモデルを構築したシステムインテグレータが、今年は大いに業績を伸ばすことになりそうだ。(安藤章司●取材／文)