その他
「ソフトウェア業界のM&Aに拍車」 シマンテックとベリタス合併
2005/01/31 15:00
週刊BCN 2005年01月31日vol.1074掲載
「ソフトウェア業界のM&A(買収・合併)にますます拍車がかかることになる」──。米シマンテック(カリフォルニア州、ジョン・トンプソン会長兼CEO)との合併によりシマンテックの副会長兼社長に就任する米ベリタスソフトウェア(カリフォルニア州)のゲーリー・ブルーム会長兼社長兼CEOは、こう言い放った。今年6月末をめどにシマンテックと合併するベリタスはストレージソフトの大手。それでも、「顧客ニーズの対応力に限界を感じていた」(同)という。合併によりシマンテックは業界4位のビッグカンパニーとなる。今後、規模を追求するようなM&Aが続くとすれば、それはソフト業界での生き残りが難しくなっているという証拠だろう。(木村剛士●取材/文)
生き残りに企業規模拡大
■売上高約50億ドル、業界第4位に
ベリタスのブルーム会長兼社長兼CEOは、「ストレージ、バックアップを提案する際、セキュリティ機能も組み込んだ製品があれば便利という要望が多かった。セキュリティとストレージ・バックアップは切り離せない関係になった」と、セキュリティソフト大手、シマンテックとの合併に至った理由について語った。
両社の合併のきっかけは、シマンテックのトンプソン会長兼CEOもストレージ・バックアップソフトに興味を持っており、両者の間で昨年9月から双方の製品・技術を生かした製品は作れないか、と提携を検討していたことから始まったという。
新会社の売上高は、2006年度には約50億ドルになる見込み。その規模は、米マイクロソフト、米オラクル、独SAPに次ぐソフト業界第4位の規模だ。そのうち、75%が企業向け、25%が一般消費者向けとしており、企業向けにフォーカスを当てた事業モデルを確立していく。
ブルーム会長兼社長兼CEOは、「両社の技術を生かした統合製品をシームレスな連携の中で開発できることになる。また、両社が保有するグローバルな販売チャネルを共有して、ストレージ・バックアップ、セキュリティの両市場で新たな顧客を獲得することにもつながる」と、合併のメリットをアピール。「シマンテックの一般消費者向け事業のチャネルを使って、ベリタス製品を個人向けに販売していく可能性もある」と、コンシューマ事業にも意欲を示している。
しかし、存続会社はシマンテックであり、「ベリタス」の企業名は消滅する。ベリタス製品のユーザーやパートナーに、事業存続に対する不安を抱かせる可能性は大きい。競合メーカーのなかには、この合併をチャンスとみる企業もいる。トレンドマイクロのエバ・チェン社長兼CEOは、「シマンテックはM&Aによって、扱う製品・サービスを拡大している一方で、製品やサービスをしっかりと顧客に提供する部分は足りない印象を受ける。当社は確実に顧客に製品・サービスを届け、有効に使ってもらうことに重点を置く」と説明。肥大化した組織で機動力や顧客対応力が無くなれば、トレンドマイクロにとっては「むしろチャンスを生む」と見えるわけだ。
■セキュリティ、ストレージ両市場の焦点に
ブルーム会長兼社長兼CEOは、「ベリタスが提供している製品開発は継続して進めるし、リストラ策を打つつもりもない。ベリタスのユーザーやパートナーに迷惑をかけることはない」ことを強調する。両社は、今年6月末をメドに合併を完了する予定で、1月17日(米国時間)には米ベリタスのエド・ギリスCFOを責任者とした企業統合を進めるための専門チームを結成。セールスやサポートサービスを担当する組織の統合、技術ロードマップの開発などをメインに統合を進めていく方針を示した。この合併準備チームがいかに早く、そしてわかりやすいビジョンを伝えていくかが、セキュリティとストレージの両市場の大きな焦点となる。
ソフトメーカーのM&Aは当たり前となり、シマンテックもベリタスもこれまで10社以上を買収してここまで成長してきた。ブルーム会長兼社長兼CEOは、「セキュリティとストレージ分野の異なる市場でのトップベンダーの合併は、今後ソフトウェア業界の“整理”の機運を高めることにつながる。ソフトウェア業界のM&Aに拍車がかかるだろう」と予測する。
異なる市場でそれぞれ大手企業としてビジネス展開してきた両社が組むことになる今回の合併。セキュリティ、ストレージ市場にどれほどのインパクトを与えるかは未知数。
それだけではない。バックアップソフト市場でシェアナンバーワンを保持するベリタスが、ブルーム会長兼社長兼CEOが言うように、「顧客の要望への対応力に限界を感じていた」としたら、技術的にも製品力からも、加えて財務の点からも、トップクラスの規模を持つソフトメーカー以外の生き残りは非常に難しくなっている、ということになるだろう。
「ソフトウェア業界のM&A(買収・合併)にますます拍車がかかることになる」──。米シマンテック(カリフォルニア州、ジョン・トンプソン会長兼CEO)との合併によりシマンテックの副会長兼社長に就任する米ベリタスソフトウェア(カリフォルニア州)のゲーリー・ブルーム会長兼社長兼CEOは、こう言い放った。今年6月末をめどにシマンテックと合併するベリタスはストレージソフトの大手。それでも、「顧客ニーズの対応力に限界を感じていた」(同)という。合併によりシマンテックは業界4位のビッグカンパニーとなる。今後、規模を追求するようなM&Aが続くとすれば、それはソフト業界での生き残りが難しくなっているという証拠だろう。(木村剛士●取材/文)
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