関西電力グループのケイ・オプティコム(田邉忠夫社長)は、国内通信業界で初めて最大1Gbpsの家庭向けFTTHサービスの提供を7月1日から開始した。料金は、上り下りとも最大1Gbpsが可能な「1ギガコース」で月額8700円と、1万円を切る利用料金を実現したほか、回線終端装置までは最大1Gbps、回線終端装置からパソコンまで最大100Mbpsのサービス「100メガプレミアムコース」(月額5400円)も用意した。超高速接続をアピールすることで加入者数の増加を加速させ、関西トップシェア獲得に意欲を示す。同社は、インターネットとIP電話、CATV(ケーブルテレビ)のサービスの総称を「eo光(イオひかり)」とし、インターネット接続サービスだけではない付加価値を提供することで、ブロードバンド環境の普及を進める。(佐相彰彦●取材/文)
関西トップシェア獲得に意欲
■近畿2府4県の50市町村でスタート ケイ・オプティコムでは、1Gbpsの超高速接続を今年4月から神戸市須磨区の一部エリアで、100人のモニターを対象に試験サービスを行ってきた。試験サービスでの技術検証を踏まえ、7月1日から1Gbpsに対応したFTTHサービスをスタートした。
提供エリアは、大阪府と京都府、兵庫県、奈良県、和歌山県、滋賀県の近畿2府4県の50市町村。8月には、さらに51市町村を加えて101市町村に広げる予定。同社が100MbpsのFTTHサービスでカバーしているのは176市町村。まずは、1Gbpsサービスを100Mbpsサービスのエリア世帯数比で55%以上にする計画だ。

荒木誠・企画室経営戦略グループ部長は、「全国では、NTTグループがFTTHのシェアの60%弱を占めているのに対し、近畿地区ではNTT西日本が50%未満と過半数を割っている。NTTにとって、全国で最もFTTHの激戦区なのが近畿地区であり、しかも(関西電力グループである)当社にとってはトップシェアが獲得できる地区である」と胸を張る。
NTTグループという巨大なライバルに先行して超高速インターネット接続サービスを提供することで差をつけ、加入者を増やす最大の武器にする。これが、1Gbpsにいち早く対応した理由だ。
まずは個人向けのサービスからスタートしたが、法人向けにも1Gbpsサービスの提供を検討している。現段階では、「携帯電話などモバイル端末やセキュリティを切り口としたネットワークソリューションの提供に力を入れている」(荒木部長)と、総合的なソリューション提案に力を入れているため、1Gbps対応の時期などは決まっていない。しかし将来は「企業でのニーズが高まれば、体制を整えていく」(同)考えだ。
■「ビジネスショウOSAKA2005」で披露
このほど大阪で開催されたビジネス総合展示会「ビジネスショウOSAKA2005」では、出展企業中最大のブースを設置して1GbpsのFTTHサービスを披露した。100Mbps接続と比較できるようにして1Gbpsの高速性をアピール。来場者の多くがブースを訪れ、1Gbpsサービスを体験していた。
ブースを訪れた来場者が高い関心を示したのがその技術。1GbpsのFTTHサービスを提供可能にしたのは、1本の光ファイバーを複数のユーザーで共有できるギガビットイーサネットを取り入れた「GE-PON(ギガビット・イーサネット-パッシブ・オプティカル・ネットワーク)」という技術だ。これまで提供してきた100MbpsのFTTHサービスでは、イーサネットを用いて光ファイバーを分岐する技術「E-PON」を採用。ギガビットに対応することで従来の最高速度の10倍まで高速化することを実現した。

具体的なネットワークの仕組みは、ケイ・オプティコム側の回線終端装置「GE-PON OLT(オプティカル・ライン・ネットワーク)」でIPネットワーク網の電気信号を光信号に変換し、「光カプラ」と呼ばれる装置で光信号を加入者宅に分岐する。加入者側は、「ONU(オプティカル・ネットワーク・ユニット)」という回線終端装置で光信号を電気信号に変換する。加えて、1Gbps対応のルータを購入すれば、複数のパソコンで100Mbps以上の高速インターネット接続が可能となる。
これら一連の仕組みは、100Mbpsサービスで採用していたE-PON技術でも採用していた。そのため、「GE-PONに変えたからといって、莫大な費用がかかったというわけではない」(ケイ・オプティコム関係者)という。
■今年度の加入者数は2倍の43万人に
これまで加入者拡大に向けて行ってきたのは価格戦略。昨年9月に6300円の月額料金を4900円に値下げしたことに加え、IP電話とのセットで5200円で提供。ADSL回線よりも低料金であることを前面に出すことで、申し込み数が通常の3倍に膨れ上がったという。
1Gbpsサービスでも、料金を「1ギガコース」で月額8700円、「100メガプレミアムコース」で月額5400円に設定。100Mbpsサービスと比べ10倍の回線速度であるため、映像コンテンツなど大容量のデータをダウンロードするユーザーにとっては値頃感のある料金といえる。「単に安いというわけではなく、高速インターネットという付加価値で既存加入者を囲い込む」(荒木部長)ことを狙っている。
しかも、今後は高速インターネットとIP電話、CATVを組み合わせたサービスを前面に押し出す。「ブロードバンド環境が生活インフラになる『コモディティ(日用品)化』を訴えることで加入者を増やしていく」(同)方針。
同社のFTTH加入者数は、昨年度末時点で22万人に達した。既存ユーザーの囲い込みと新規顧客の開拓で、今年度は前年度の2倍弱にあたる43万人の加入者を見込んでいる。