韓国・サムスンSDS(キム・イン社長)が運営するサムスンSDSマルチキャンパスは、IT教育をさらに拡充する。ITの発展につれ企業が求める人材も多様化しており、そうした人材ニーズに応えるほか、プロジェクトマネージャー養成課程の拡充などマーケットの環境に応じたカリキュラムを揃えていく。今後、e-ラーニングは年率50%増の勢いで市場規模が拡大すると予想。売り上げも年率20%増で推移すると予想している。
サムスンSDSマルチキャンパスは、オフライン教育で月間約2500人が学び、e-ラーニングでは同じく3万人程度がIT教育などを受けている。また、講師の派遣などを通じてIT教育の拡大を図っている。
サムスンSDSのIT教育事業は、これまでに韓国IT業界に多くの人材を供給してきた。約20万人といわれる韓国のIT人材の大半がサムソンSDSマルチキャンパスの出身者だ。現在、①e-ラーニング、②オフラインによるIT教育、再教育、就職のための教育、③国家資格であるコンピュータ活用能力試験「e-テスト」、④人材開発に関するコンサルティング――の4つの分野を対象に事業を展開しており、マルチキャンパスは特に③のオフライン教育を担当している。
マルチキャンパスの職員は約250人で、1日に800人、1か月では約2500人がマルチキャンパスで学んでいる。オフライン教育の場合、カリキュラムの90%がIT教育で、残り10%が経営学や語学などとなっている。学生の90%はIT関係の企業に勤務しながら最新技術やスキルの向上を目指しており、10%は就職を目指してマルチキャンパスに通っている学生となっている。
現在人気のある講座は、インターネットやウェブ関連、次いでモバイルなど。大きな軸としては言語、データベース、OS、ソリューションの4つに分かれる。これらのe-ラーニングの場合、技術にアップデートするため新規教育の開拓が急務で、今年1月には106件の新規科目を設けた。年間では200件の新しいカリキュラムを導入していく予定だ。
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韓国でのIT教育の実態について、サムスンSDSのジャン・カンダル・サムスンSDSマルチキャンパス教育企画&管理チームジェネラルマネージャーに聞いた。
――韓国IT業界に多くの人材を輩出するサムスンSDSの教育ビジネスの位置づけは。 「サムスンSDSの教育ビジネスの売上高は、全体の2%程度と小さい。しかし、約20万人といわれる韓国のIT人材のほとんどはサムスンSDSマルチキャンパスの出身者だ。年間数万人がマルチキャンパスで学ぶが、卒業生が手にするのは修了書だけ。IT企業への登竜門だけに、その修了書があればスキルは保証されるわけだ。最近人気がある講座は、インターネットやウェブ関連、次いでモバイルなどとなっている。ITベンチャーがブームになった頃は、マルチキャンパスに入るのに24倍の競争率になったこともあり、入学するだけでも大変だった。経営などの初歩教育はしばらく人気がなかったが、今年になって再び初歩教育課程の修了者に対するニーズが出てきた。ITベンチャーなどに活力が戻ってきた証拠だと見ている」
――e-ラーニングの人気が高いようだ。 「オンラインの場合でもIT教育には実習が必要になる場合が多いので、オフラインをミックスした教育体系を作っている。最近では基本教育はオンラインで行い、オフライン教育は夜間や週末に行うコースが増えている。韓国でも週休2日が定着してきたので、週末に講習を受ける人たちが増えている」
――他のIT教育機関との違いは。 「IT人材に対するニーズは拡大している。このため韓国ではサムスンSDSの競合企業も、同じような教育センターを設置するケースが増えている。IBMやオラクルなどの企業も教育センターを持っているが、それは自社製品のユーザー教育がメインだ。我々はサムスンSDSという最先端のIT企業が運営しており、常に最新のテクノロジーが導入されている。それが強みになっている。ただし、マルチキャンパスは他の競合よりも費用が20%程度割高だ。IBMやオラクルなどの教育センターも同程度と認識している」
――IT教育の拡充について。 「最近e-ラーニングの受講者が増えている。e-ラーニングを拡充するための投資はオフラインに比べて少ないが、毎日アップデートする必要があるなど費用がかさむ面もある。e-ラーニングのウェートが高まっても、オフライン教育の講師を減らしたり、教室そのものを減らすということはない。現在は言語の人気が高く、Javaや.NETの教育を受けた人材に対するニーズは高い。こうした教育でもオンラインとオフラインを組み合わせて提供している。マルチキャンパスでは、サムスンSDS内部の社員教育も担当している。社員は年間オフライン30時間、e-ラーニング100時間の研修が義務づけられている。こうしたカリキュラムを開発するために30人の人材を置いており、常に最新の技術の導入と、市場で求められる人材の育成に努めていくつもりだ」