過当競争の緩和につながる道も

　公正な競争を行うための規約や規則の確立に向けて活動している社団法人、全国家庭電気製品公正取引協議会（家電公取協、1978年設立）に、大手家電量販店が相次ぎ会員になっている。今年7月にはヨドバシカメラやビックカメラ、石丸電気が入会した。昨春には、ヤマダ電機がすでに加盟している。

　ヤマダ電機やヨドバシカメラ、ビックカメラなどは、今年8月末での解散が決まっている家電量販業界の中核団体だった日本電気大型店協会（NEBA）には参加していない。NEBA非会員で、しかも業界上位の量販店が価格表示適正化の徹底など家電量販業界が抱える課題の解決に向けて動き始めたのだ。

　家電公取協の山木康孝専務理事は、「これまでアウトサイダー（非会員）だった量販店が加入することは非常に喜ばしいこと。業界全体がルール遵守の徹底に積極的に取り組んでいる証拠だ」とアピール。今年度の事業計画については、規約の周知徹底および普及促進に加え、規約自体の見直しなどを行う方針だ。

　公正な競争を行うベースとなる小売業表示規約は84年の施行以来、20年以上が経過した。この20年で家電量販業界は企業の参入と撤退、統合・再編などで市場環境が大きく変化した。最近では、家電量販業界のコンプライアンス（法令遵守）に関する見方も厳しさを増しつつある。昨年9月には公正取引委員会が「家電製品の流通実態に関する調査報告書」を、今年4月には「大規模小売業者による納入業者との取引における特定の不公正な取引方法の告示」を公表した。こうしたなか、これまで非会員だった有力企業がルールに沿ったビジネスを行おうと加入に踏み切ったことは注目に値する。

　これには、NEBAが今年8月末で解散することも影響しているという見方もある。NEBAの岡嶋昇一会長が4月に開いた最後の定例会見で、「NEBAは解散するが、各家電量販店が分け隔てなく話し合える場や連携が出てくる可能性もある。現に、ヤマダ電機が全国家庭電気製品公正取引協議会に参加したという事実もある。NEBAの解散は、あくまでも発展的解散」と述べていた。あるNEBA会員は、「NEBAのなかで、馴れ合い生じていた」と認める。

　家電公取協の会員には、NEBAに加入する企業が個別会員の大半を占めているのが現状だ。7月末の時点で、小売業部会の個別会員26社のうち18社がNEBAを通じて同協議会に参加している。

　家電量販業界を取り巻く環境は、低価格やポイント還元、チラシ合戦など競争がエスカレートする一方。果たして、薄利多売を徹底するビジネスが正しい姿であるかということに疑問を感じる業界関係者は多い。

　価格表示の適正化をはじめとして公正競争の規約を見直すことなど、業界のルールを改めて確立することが家電量販業界は求められている。自由な意見交換が行える点では、有力企業が多数集まる場が最適。家電公取協の渡辺眞也事務局長は、「各会員から新しいルールづくりに向け、さまざまな意見が飛び交うことは業界の発展のためには必要なこと」と話す。

　低価格化競争が激化していることから、商品の価格を小売サイドが決定する「オープン価格」についても、「最近では賛否両論になっている」（渡辺事務局長）のだという。家電公取協には、メーカー会員からなる製造業部会も設置されている。製造業部会と小売業部会の連携をさらに強化することで、透明で公正な取り引きに立って、過当競争を防ぐ道筋も見えてくるはずである。 佐相彰彦●取材／文