その他
ITSジャパン、中国でVICS実証実験
2005/11/07 14:53
週刊BCN 2005年11月07日vol.1112掲載
先行するEUに対抗、巻き返しなるか
ITS(高度道路交通システム)を推進する民間団体、ITSジャパン(豊田章一郎会長=トヨタ自動車名誉会長)が窓口となって、昨年から準備を進めてきた中国・大連市でのVICS(道路交通情報通信システム)の実証実験が近く開始されることになった。交通情報提供システムでは、EU(欧州連合)が先行して中国への積極的な売り込みを展開しており、2010年には自動車保有台数5500万台と予想されている中国のITS市場をめがけて日本も巻き返しを図る。
中国の自動車市場は、2004年に500万台を突破して米国、日本に次いで世界第3位の規模に成長、保有台数も2700万台を突破した。08年の北京オリンピック、10年の上海万博に向けてモータリゼーションがさらに進展し、大都市部を中心に交通情報提供サービスの需要も高まると予想されている。
大連市での実証実験は、大連市交通警察支隊が購入した車両(トヨタ製エスティマ)に日本製カーナビが装備されていたのが発端。大連市から打診され、昨年8月に共同で研究会を設置。先月、大連市に開設されたFM放送局を利用して、中国では初めて日本のVICS方式に基づくFM多重放送(DARC方式)の実験が実現することになった。
大連市は中国のITS推進モデル都市としても認定されており、ITSジャパンが今回の実証実験のPR効果に寄せる期待は大きい。「道路交通情報システムでは、技術的に見て日本のVICS方式が世界で最も進んでいる」(寺島大三郎・ITSジャパン専務理事)とは言うものの、中国市場の売り込みではEUに大きく水を開けられているからだ。
EUは、すでに北京オリンピックに向けて各国要人の自動車での移動状況を把握して警護に役立てることもできる道路交通情報システムを中国政府に提案しているという。日本もトヨタ、本田技研工業、日産自動車の3社を中心に中国への売り込みを図ってきたが、今年春以降は中国での対日感情悪化で、表立った動きを自粛しているのが実情だ。
大連市での実験も、民間のNPO法人であるITSジャパンが窓口となり、実証実験の費用をITSジャパンの会員企業20社が出し合って手弁当に近い形で行う。政府レベルで売り込みを図っているEUにとても対抗できる体制とは言い難いが、道路交通情報のインフラをEUに握られてしまえば、巨大な中国のITS市場で有利な展開は望めない。日本のIT企業にとってもVICSで培ってきたカーナビなど車載情報端末の技術優位性を生かすこともできなくなる。
これまでも日本のIT産業は、欧米にプラットフォーム分野を握られて苦渋を舐め続けてきた。最近では音楽コンテンツ配信サービスのプラットフォームもアップルのiPodに握られてしまった。
日本経済団体連合会(奥田碩会長=トヨタ自動車会長)は先月、政府が策定中の次期ICT国家戦略の策定に向けて「安全・安心な社会の確立」の視点から「移動・交通」を盛り込むことを改めて求めた。縦割り行政の壁に阻まれ足並みが揃いにくかった現状を打開して、国家戦略としてITSを推進しようという狙いである。
e─Japan戦略では、医療や金融、教育など様々な分野で社会ITインフラ整備が進められてきたが、その多くは国内市場における権益を調整する形で構築されてきている。日本のIT産業の競争力強化を図るためにも、世界市場のプラットフォームになりうるITインフラを構築し、政府レベルで世界に売り込んでいく国際戦略が求められている。 千葉利宏(ジャーナリスト)●取材/文
続きは「週刊BCN+会員」のみ
ご覧になれます。
(登録無料:所要時間1分程度)
新規会員登録はこちら(登録無料)
ログイン
週刊BCNについて詳しく見る
- 注目のキーパーソンへのインタビューや市場を深掘りした解説・特集など毎週更新される会員限定記事が読み放題!
- メールマガジンを毎日配信(土日祝をのぞく)
- イベント・セミナー情報の告知が可能(登録および更新)
SIerをはじめ、ITベンダーが読者の多くを占める「週刊BCN+」が集客をサポートします。
- 企業向けIT製品の導入事例情報の詳細PDFデータを何件でもダウンロードし放題!…etc…