ネットワーク系SIerがソフトメーカーと組み、アイデンティティ管理ソフトを販売する動きが出てきた。IPテレフォニーやネットワークセキュリティ関連など得意分野の製品やサービスと組み合わせて提供していく。アイデンティティ管理ソフトを販売するのは、内部統制支援ビジネスを手がけることを視野に入れているためで、ネットワークシステム構築の強さを生かす。（佐相彰彦●取材／文）

内部統制支援ビジネス着手を視野に

■ネットマークスとオラクルが協業

　ネットマークスは、アイデンティティ管理で日本オラクルと協業した。オラクルの「アドバンストソリューションパートナー」となり、今年夏に出荷を予定している「Oracle Identity and Access Management（オラクル・アイデンティティ・アンド・アクセス・マネジメント）」の拡販を図る。両社で30人規模のプロジェクトチームを結成し、共同でシステムの開発や構築を行っていく。

　具体的な販売のアプローチとして、アイデンティティ管理ソフトをベースに、IPテレフォニーやVPN、ワンタイムパスワードなどの製品を組み合わせて提供していく。橘伸俊・執行役員ソリューション統括本部長テクニカルソリューションセンター部長は、「オラクル・アイデンティティ・アンド・アクセス・マネジメントは、ワークフローに沿った設計が可能なほか、既存環境に対応させるための作り込みも必要ない。その手軽さを利点とみて、協業することとなった」という。同ソフトの販売で初年度6億円の売上高を目指す。日本オラクルの北野晴人・システム事業推進本部営業推進部Fusion Middlewareグループ担当シニアマネージャーは、「今までアイデンティティ管理ビジネスを手がけていないため、そのビジネスに強いベンダーとの協業が重要と判断した」としている。

■統合インテグレーションがカギ

　ネットマークスとオラクルが協業したのは、内部統制支援ビジネスを手がけることも視野に入れているため。ネットマークスの橘部長は、「ネットワークセキュリティシステムを提供していくうえで、今後は企業の内部統制強化を踏まえてインテグレーションしていかなければならない」と判断する。

　しかし、企業の内部統制強化が可能なシステムを提供するうえでは、ERPや文書管理に適したアプリケーションサービスを揃えられるかどうかがカギといわれている。そのため、アプリケーションサービスに強いSIerが内部統制支援ビジネスを手がけようとしている。ソフトメーカーにとっても、サーバーシステムの構築に強いSIerとアライアンスを組むケースが多いといえよう。

　こうした状況について日本オラクルの北野シニアマネージャーは、「内部統制関連のビジネスでは、認証スイッチから認証サーバー、認証デバイスとの連携を踏まえたシステム構築に強いのは、ネットワーク系SIerだ」と否定する。最近は、システムベンダーがネットワークセキュリティを切り口にユーザー企業の内部統制支援ビジネスを手がける動きもある。そのため、日本オラクルはネットワーク系SIerとのパートナーシップを組んだというわけだ。

　ネットマークス以外でも内部統制支援ビジネスの着手に向け、アイデンティティ管理ソフトの販売を図ろうとするネットワーク系SIerが出ている。ネットワンシステムズでは、現段階でアイデンティティ管理ソフトの販売を行っていないものの、「視野には入れている。セキュリティサービスの提供が拡大できることに加え、ネットワーク機器の拡販にもつながるためだ」（澤田脩社長）としている。今後は、ネットワーク構築をベースとした内部統制強化がクローズアップされる可能性もある。