シマンテックの木村裕之社長は、法人向け事業で①地方ビジネスの拡大②顧客業種別の提案強化③サービス事業の伸長──の3分野を、2007年の強化施策とする事業方針を示した。顧客層が東名阪に集中する現状を打破するため、地域に営業所を設けることを検討。一方、金融や政府機関など他業種に比べて専門性が求められる顧客業種には専門組織をつくってビジネスを展開する方針も決めた。

　地方顧客の開拓では、昨年すでに福岡県に九州営業所を開設している。従来は東京本社、名古屋支店、西日本支店（大阪府）の3拠点でビジネスを展開し、主要商圏だけに営業拠点を限ってきた。ただ、「地方マーケットに弱い」という慢性的な課題に抜本的に取り組むため営業所の開設に至った。木村社長は「九州地区以外でも地方の営業所開設を検討している」と構想を語っており、拠点数を今以上に増やすことを示唆した。

　一方、顧客業種ごとに分けた提案活動および社内組織整備は、明示した3つの強化施策のなかでも大きな柱。情報セキュリティにかかわるサイバー攻撃は多種多様化し、「各業種ごとに求められるニーズも違ってきた」ことが強化の理由。各業種のニーズに合わせた製品・サービス体系を用意し提案活動に力を注ぐ。個別提案のターゲットでは、金融機関や官公庁などの政府機関、通信事業者、電気やガスなどの社会インフラ事業者で、一部では専門部署を立ち上げて営業活動を進める。

　金融機関については、昨年、社内に金融機関向け事業の専門組織を組織。警察や防衛庁など政府機関向け事業では、政府機関向け製品・サービス販売に特化した新会社「シマンテック総合研究所」を100％出資で設立した。木村社長は新会社設立の背景について「政府機関からはとくに専門性の高い要求をがある。専門会社として政府機関に集中する体制が必要と判断した」と説明している。米本社では業種に特化した会社を設立することが一般的というが、日本市場では初めて。

　一方、サービスビジネスでは、顧客の情報システムの遠隔監視や運用サービスなどを手がけているが、07年は販売体制を強化していく方針だ。

　シマンテック日本法人は、06年4月に旧ベリタスソフトウェア日本法人との合併を完了。旧両社の技術を融合した製品や、一部製品体系の見直しを進めた。パートナープログラムを統合した新制度も用意した。木村社長は、「合併効果は計画通り。06年で新生シマンテックのビジネス基盤が整った」と自信を示している。