「下請け」向けと販社引き締めがカギ

　「SMB（中堅中小企業）マーケットに新しいERPシステムを提案する」──NECは昨年5月、「EXPLANNER宣言」と銘打ったメッセージを発信し、自社の中堅企業向けERP（統合基幹業務システム）である「EXPLANNER」を大幅に刷新した。

　中堅ERPの各種調査でシェア上位に「EXPLANNER」が顔を出すことはなかった。それが「打倒、GLOVIA」を掲げ、トップの富士通を追撃するというのだ。その一連の動きを追跡してみた。

　NECの逆転シナリオは、2つに大別される。「開発フレームワーク」化と「下請け会社」向け業種別ERPの拡充だ。グループ子会社や「特約店」が個別開発したERPや販売体制を含め、「NEC系列のERP」として製販一体感を醸成する。

　これまでNECでは、ハードウェア販売が優先されてきた。ソフト開発・販売は二の次になり、旧「EXPLANNER」の知名度も低く、系列販社がこぞって独自のERPを開発、NEC系列のERPが複数登場した。NECのユーザー企業ですら、「EXPLANNER」を提案されるケースは減り、その存在を知らされない悪循環が生じていた。

　昨年5月に満を持して出した新版の「EXPLANNER／Ai」は、こうした弊害の解決を意図した製品だ。大企業の「下請け会社」が大半を占めるSMBでは、法・税制改正の対応に加え、発注元に応じて、固有の機能追加を必要とすることが多い。そこで、同ERPを「開発フレームワーク」化し、基盤上で刷新／拡充を柔軟にできるようにした。

　系列販社では、別々の開発体制が敷かれ、特化機能のアドオンや再開発に手間取るケースがあった。しかし、「開発フレームワークを販社に提供することで、短納期で柔軟な開発が容易になり、系列販社全体のSI力は強化される」（中村敏・第二国内SI推進本部統括マネージャー）と、系列販社を引き戻そうと懸命だ。

　加えて、「下請け会社」に特化した製造業（組立、自動車部品、建設）、プロセス業（食品）、流通業（卸売）向けに業界特有の業務プロセスを備えた「業種ERP」を提供。昨年11月には、元々「EXPLANNER」ベースで開発された日本事務器の食品業向けERPなど、NEC販社3社の製品を年商50億円以下の中小企業向けに「EXPLANNERスマート」という名称でスイート化した。また4月には、国内初の物流特化の機能やワークフローを、会計・人事給与など「業種共通機能」に組み込む。

　旧「EXPLANNER」の販売特約店は約100社あった。昨年5月にいったん特約店契約を解消したあと、新版では、これまでに24社が再登録。これを2008年度（09年3月期）までに160社体制にし、同ERPの売上高を08年度までの3年間で400億円（今年度は約100億円）にする計画。しかし、NEC本体がもたつく間、系列販社は他社の有力ERPを担ぎ、内部統制需要に備えた。NEC本体は、「EXPLANNER」の魅力や知名度を引き上げ、系列販社を一枚岩にまとめあげることができるかどうかが、「GLOVIA」打倒のカギを握るだろう。