リコー（桜井正光社長）は、昨年6月に発売したROM部分と書き込み可能な部分が共存した「ハイブリッドCD－R」の販売を強化する。企業内や事業所、外注先などとデータをやり取りする可搬性のある媒体のセキュリティ対策が遅れているため、運搬中の紛失や不正を防止する需要があると判断。リコー販社を通じた直販や家電量販店の販売に加え、今後、SIerのチャネルを開拓し、来年度（2008年3月期）は今期の5－10倍の販売枚数を目指す。

　同社の「ハイブリッドCD－R」は、暗号鍵方式で機密データを安全に運搬・保管できる「CryptDisc」とパスワード方式の「KIMITSU」の2種類。いずれも、ROM部分に高度な暗号化・複合化ソフトやライティング、コピーガードの機能を搭載しているほか、各種業務アプリケーションのユーザーインターフェースから書き込みや読み出し操作ができるのが特徴だ。

　「CryptDisc」は、「CryptDisc鍵発行ソフト」をSIerなどに提供し、同製品をドライブに挿入することで鍵発行からデータ書き込みまでの自動処理が可能になる。「KIMITSU」は、データを暗号化してCD－R部分に記録し、パスワード設定でセキュリティを守る媒体で、「CryptDisc」に比べ操作が簡単になっている。

　05年9月には、内閣官房の情報セキュリティ対策会議で「政府機関の情報セキュリティ対策のための統一基準」が決定し、可搬性を有する光ディスクに強度の暗号化を行うことが明示された。官公庁や自治体は、こうした媒体のセキュリティ対策を進めており、「大手企業を中心に一般企業でも、同様の対策が波及する」（菅原宏樹・RMP事業部販売室マーケティンググループリーダー）とみて、「ハイブリッドCD－R」の需要が高まると分析している。

　同社調査によると、国内企業のCD－R使用枚数は年間6000万枚。そのうち、「すでに対策を講じた」のは35％で、残りはセキュリティ対策の必要性は感じつつ有効な手立てを講じていない。「ハイブリッドCD－Rは、取引先へ間違って別の媒体を送付しても、暗号鍵がかかっているため開くことができない。全社レベルで一般的な媒体は使わず、当社の同CD－R使用を義務づける企業が出てきた」と、ようやく媒体のセキュリティに関する意識が高まり、需要が伸びそうだという。今後は、自社系列の直販だけでなく、他社のSIerにも販路を広げる。