NEC(矢野薫社長)は、ブレードサーバーを中堅企業市場に本格拡販する。中堅企業に適した新製品を2月9日に投入。中規模の情報システムに採用しやすい設計にしたほか、専門知識・スキルがなくても販売会社が販売しやすい特徴を持たせた。中堅企業市場開拓には販社経由の間接販売が必須と判断し、販社が販売しやすい製品に仕立てた。ブレードサーバーに特化した販社向け支援プログラムも開始。手厚い教育や販売支援を行い、販社の販売力アップをバックアップする。ブレードを収納する「エンクロージャ」を台数限定で無償提供するキャンペーンも行う。ブレードサーバーは、年率およそ50%増で伸びる成長市場。だが、各社とも直販が主体で販社経由の販売が少ないのが共通の課題だ。NECは、製品と販売促進の両面で体制を整えて市場に攻め込み、トップシェアの日本IBMを追撃する。
導入に専門知識不要な新製品投入
IDC Japanによると、2006年上半期(1-6月)国内ブレードサーバー市場で、NECの金額シェアは18.8%で3位。1位は日本IBM(33.0%)が堅持、2位には05年上半期に5位から躍進した日立製作所(20.5%)が位置する。NECは、来年度(08年度3月期)の獲得シェア40%を目標に掲げ、2社を抜いて一気にトップベンダーの座を狙う。
トップになるための重要施策に位置づけているのが、SIerなど販社を経由した間接販売による中堅企業市場の開拓だ。ブレードサーバーは、06年上半期は台数ベースで46.3%増(IDC Japan調べ)と急成長している。ただ、各メーカー共通して、顧客の大半は大企業で、販売方法は直販が中心。一般的なIA(PC)サーバーに比べ、ブレード特有の高い専門知識・スキルが必要なため、販社にとっては提案スキルの面で敷居が高く、販売しにくい商材だからだ。NECでも自社製ブレードの全販売台数のうち間接販売は「5%程度」(山科俊治・クライアント・サーバ販売推進本部長)なのが現状。シェア獲得には、間接販売が必須と判断し、中堅企業向けモデルの発売と販売体制および販促施策の強化を図った。
新たに投入するブレードサーバー「Express 5800-120Bb-m6」は、ハード面でラックサーバー並みの拡張性を追求した。ブレード1枚に搭載できるHDD数を従来の2台から6台に増加、PCIスロットも2基から4基に増やした。従来は、ラック型からブレードに移行する場合、外付けのストレージを用意し、ディスクの再設計やシステムの再構築などの必要があったが、新製品ではこれらの作業を省くことができる。「導入期間は従来に比べて約半分で済み、SEの工数は4分の1に短縮することが可能になる」(山科本部長)そうだ。また、従来モデルにはないソフトのインストールなどを容易にする専門機能を搭載。「特別な知識が必要なく、ラック型を導入するのとほぼ同じ感覚で構築できる」ため、販社が提案しやすくした。
価格は64万円からで、新型ブレードを収納する「エンクロージャ」の「SIGMA BLADE-M」が26万円。発売日から今年6月末まで行うキャンぺーンでは、1000台に限りブレードとエンクロージャをセットで購入した場合、エンクロージャの代金を無料にする。
ブレード専門の支援プログラム「SIGMA BLADEパートナープログラム」も4月から開始する。販社のSE向けに、ブレードサーバーや管理ソフト、仮想化ソフトなどブレードの販売・導入に必要な知識やスキルを教育する。「SIGMA BLADE」の評価やアプリケーションとの連携を試せる検証センターも本社のほか、ショールーム「クラサバ市場」にも設けた。NECはサーバーやPCの販売で、全国に360-380社の販社を有しているが、このうち「100社には新支援プログラムを活用してもらえるようにする」(本永実・クライアント・サーバ販売推進本部マネージャー)。
NECは、「ft(無停止型)サーバー」でも専門支援プログラムを用意しているが、導入企業は100社を突破した実績があり、販社経由の販売が伸びている。ブレードでも専門プログラムをつくることで、代理店経由の販売を一気に伸ばす狙いだ。
急成長するブレードサーバー市場だが、間接販売による中堅企業の開拓は、まだ各メーカーとも攻め切れていない。この市場を取れるかどうかが今後のシェア競争を左右する。IAサーバーで今年度もトップシェアがほぼ確実なNECが、ブレードサーバー分野においても戦略的強化に乗り出し、トップ獲得に向けて本腰を入れて動き出す。