インテルが「vPro」テクノロジー搭載製品の拡販に本格的に乗り出した。システム提案が必要な製品であることからSIerとのアライアンス強化に力を注ぐ。これまでパソコンなどメーカーに対するOEMビジネスをメインとしてきた同社が、果たしてSIerとのパートナーシップを深めることができるのだろうか。（佐相彰彦●取材／文）

SIerとのアライアンス強化へ

■“ワークショップ”で情報提供

　「vPro」は、クライアント端末の資産管理やセキュリティ機能を強化するテクノロジー。搭載パソコンが電源オフやOSダウンの状態でも、ウイルス検出や端末内のソフトウェア資産を管理できる。しかも、リモートで把握できるため、企業のシステム管理者にとってはメンテナンス作業時間の大幅な削減が可能。OSに依存しないことから、簡易的な仮想化環境を構築できることも利点だ。

　クライアント自体にシステムとのシームレスな連携が可能な機能を搭載していることから、パソコンの販売代理店にとっては単に端末だけを販売する“箱売り”よりもシステムを含めた製品・サービスでの提案が重要となってくる。そこで、インテルはSIerとのアライアンスを強化することに踏み切った。廣田洋一・ビジネス・クライアント・プラットフォーム・マーケティング部長は、「パソコンメーカーに製品を提供するOEMビジネスだけでなく、どのようなソリューションが最適なのかを、当社からSIerに対して提案していくことがvPro関連製品の拡販につながる。2007年は、SIerとのパートナーシップを深めることが最大の目標」としている。アプリケーションサービスとの連動も重要であるためISVを販売代理店として獲得することも視野に入れる考えだ。

　SIerとのアライアンス強化として、まずはvProに関する最新情報の提供や共同マーケティングの提案などを行っていく。廣田部長は、「“ワークショップ”と称した会合を、昨年は2回開催した。今年は数を増やしていく」という。会合では、製品・サービスの事例を紹介。ユーザー企業への導入ポイントがどこにあるのかを詳細に説明する予定だ。「vProで広がる世界を語るという理想論ではなく、実際の導入事例を分析してユーザー企業が求めるものが何かを訴えていく」としている。しかも、売りやすい環境を作るため、「SIer同士のマッチングも行っていきたい」考えだ。ただ、SIer向け販売支援プログラムの策定については、「現段階では考えていない。当社のパートナーは、あくまでもパソコンメーカー。プログラムを提供するのであれば、パソコンメーカーと共同で策定するなど、すべてのパートナーがメリットを得られるような体制を整えていく」としている。

■法人向けPCの1割に搭載目指す

　インテルがvProを市場投入したのは昨年10月。ビジネス規模については、「市場投入から日が浅いため、まだビジネスが軌道に乗ったとはいえない」と認める。しかし、vProをベースとしたシステムで大きな案件が徐々に出てきているという。ひとつの例が医療機関向けへの提供。診療所向け電子カルテ「メディカル・ステーション・クリニック」の開発・サポートを手がけるメリッツが約1800ユーザー、約7000台のクライアント端末に対するリモートサポート提供に向けた実証実験を進めている。インテルにとっては、「実証実験が成功に終わり、医療機関へのサポートを変革できれば、大きなビジネスになる」と期待する。

　vProビジネスの拡大策は、これまでのプロセッサ供給とは異なり、いかに製品・サービスを提供できるかにかかってくる。「07年末までに国内市場に出回っている法人向けクライアントの10％にvPro製品を搭載することを目指す」。これを達成するために、vPro関連として今年前半までにノートパソコン向け製品の販売、今年末までに既存製品のバージョンアップも行う計画。あとは、いかにSIerを販売代理店として確保できるかが成否のカギを握る。