「WPS」採用のメーカー相次ぐ

　個人向け無線LANの普及に向け、ネットワーク機器メーカー各社が新設定方式「WPS（Wi－Fi Protected Setup）」を採用する動きが出てきた。

　「WPS」とは、ワイヤレス対応ネットワーク関連機器の標準化をワールドワイドで推進している団体「Wi－Fiアライアンス」が個人ユーザーに無線LANを一段と普及させるために策定した。接続が簡単で、しかもセキュリティ機能を強化した「かんたんセキュリティ設定」が最大の特徴だ。設定方式は、アクセスポイントと接続したい機器に搭載されたボタンを相互に押すことで認証可能な「プッシュボタン」と、個々のネットワークデバイスに割り振られたPINを登録管理機器に入力することで相互認証や登録を行う方式「PIN（個人暗証番号入力）」の2種類がある。

　ワールドワイドで標準化が進められている規格ということもあり、国内の主要ネットワーク機器メーカー各社がWPS搭載製品の市場投入を発表。コレガは、WPS準拠の無線LANルータを1月下旬から順次発売した。バッファローは3月上旬から製品の販売を開始、しかも同社独自の簡単設定方式「AOSS」とWPSの両方を搭載する。

　WPSを採用するのは、大きなビジネスチャンスにつながるとの判断からだ。コレガの藤川為廣・商品本部製品プロデュースⅠ部係長は「簡単設定で各社が共通の方式を採用することになれば、製品力で勝負できる」としている。「簡単設定」という点ではバッファローが「AOSS」ですでに多くのユーザーを獲得し、国内無線LAN市場でトップシェアを維持している。コレガにとって、WPS採用で簡単設定の機能を手に入れることは、「機能面で他社に引けを取らない」ことにつながる。一方、バッファローは「他社の製品が簡単設定機能を搭載するようになれば、確かに当社の強みが薄れるかもしれない。しかし、当面は浸透している当社のAOSSが国内で主流の簡単設定方式で継続するだろう。しかも、今後は当社もWPSにも対応することから、ユーザーにとってはメリットが大きい」（広報担当者）としている。

　また、WPSは無線LANルータやノートパソコンなどに限定された方式ではなく、パソコン周辺機器や家電機器などにも対応している。そのため、デジタルカメラで撮影した画像データをパソコンを介さずにプリンタで印刷が可能。インターネット対応の薄型テレビであればケーブルなしで接続できるようにもなる。

　「ワイヤレス環境でネット活用が可能な端末が増えれば、家庭内に無線LAN環境を構築するユーザーのすそ野が広がる」（コレガの藤川係長）と言い切る。バッファローも「ゲームメーカーやテレビメーカーなどがAOSSを採用しているケースもあるため、ワイヤレスによる端末の接続ニーズが高まっているのは事実」（広報担当者）と指摘する。

　現在、家庭内に無線LAN環境を構築しているのはパソコンユーザーが中心だ。しかし、WPSが普及すればパソコンの利用頻度が低いユーザーでも無線LANを導入する可能性を秘めている。まずは、無線LANルータが出揃う春商戦がWPS浸透のカギを握ることになる。