大手SIerの伊藤忠テクノソリューションズ(CTC)の仮想化ビジネスが好調だ。仮想化技術を全面的に採用した日本ヒューレット・パッカード(日本HP)のストレージ製品の保守サービスを業界に先駆けてスタートするなどの積極的な取り組みがビジネス拡大に結びついた。これまでは自社が販売する一部HP製品の保守は製造元であるHPに依頼していたが、HPのミッドレンジストレージ製品に対する顧客からの引き合いが増していることから、自ら保守サービスに乗り出した。柔軟なシステム拡張が可能な仮想化技術を搭載したストレージ製品のより一層の販売増を狙う。(安藤章司●取材/文)
いち早く仮想化技術を取り込む
EVAの保守に乗り出す
CTCは国内SIerとして初めて、HPのミッドレンジストレージ製品「HP Storage Works Enterprise Virtual Array(以下EVA)」の保守サービスを始めた。HPと同等の保守サービスを提供するもので、昨年7月からスタート。従来からEVAやProLiantサーバーなどのHP製品を販売してきたが、EVAなどの一部製品については保守サポートをHPに委託していた。顧客のITライフサイクル全体のサポートを重視するCTCでは、EVAについても販売から保守まで一貫したサービスを提供することで付加価値の向上を狙っている。
HP独自の仮想化技術を採り入れたEVAは、ハードディスクへの負荷を分散したり、ストレージ容量を柔軟に割り当てるなど仮想化ならではのメリットが多数ある。「顧客が必要なときに必要なだけのストレージ容量を提供できる」(松崎雅浩・ITエンジニアリング室プラットフォーム技術部長補佐)と、拡張性を高く評価する。管理ソフトウェアはグラフィカルユーザーインタフェース(GUI)を多用するなど「使い勝手もいい」という。
最小限度のシステム構成で稼働させ、必要に応じて拡張する“ミニマムスタートアップ”が仮想化技術によってより容易になる。顧客にとってみれば初期投資を抑えられる利点がある。
CTCでは「HPの仮想化技術の粋を集めたEVAは、顧客の引き合いも増えている」(プラットフォーム技術部IA技術課の岩舘誠幸氏)と手応えを感じる。
マルチベンダーを徹底 HPのサーバー製品の強さもEVAの販売増を後押ししている。CTCはシステムのインフラ部分に強いSIerであり、今から約15年前の1992年からHP(当時はコンパックコンピュータ)製品を取り扱ってきた豊富な実績を持つ。2002年に旧日本HPと旧コンパックコンピュータが合併してからは新生日本HPの製品の販売に取り組んできた。HPサーバーの扱いに長けていることから、EVAについても“CTCから購入したい”という顧客の声が多く寄せられる。

折しもHPでは仮想化技術と相性がよいブレードサーバーの製品ラインアップを拡充しており、こうしたことも仮想化技術を用いたEVAの需要を拡大することにつながっている。昨年8月からVMwareなどの仮想化技術に標準で対応した次世代ブレードサーバー「HP BladeSystem c-Class(以下c-Class)」の国内出荷を順次スタート。仮想化環境を前提に設計されているc-Classをベースにサーバーの仮想化を進めるとともに、ストレージの仮想化も進めることで顧客の利便性は大幅に向上する。c-Classと仮想化ソフトのVMware、ストレージのEVAをベースに仮想環境を構築することで、相互接続性の高いシステム構築が可能になる。こうした一体的な構築は運用効率の向上に貢献し、維持コストの削減に結びつく。
CTCはさまざまなベンダーの製品を組み合わせて、顧客にとって最適なシステムを提供するシステムプロバイダーとして強みを発揮している。ストレージメーカー大手のEMCやサン・マイクロシステムズ、日立製作所など多数の有力メーカーの製品を取り扱う。マルチベンダーに対応した保守サービスにも力を入れており、単なるハードウェアの販売代理店ではなく、「マルチベンダー製品を組み合わせたシステムでも、トータルサポートができる技術力」(松崎・部長補佐)が他社との差別化につながっている。
互換性確保で障害を防ぐ しかし一方で、サーバーやストレージ、ネットワーク機器、それぞれのハードに搭載された仮想化ソフトの互換性は重要な課題として横たわる。互換性に不安がある製品同士を組み合わせて障害を起こしてしまうと、どのメーカーのどの製品が原因なのかを特定するのに手間がかかりかねない。
停止することが許されない基幹業務システムで障害が起き、なおかつ復旧に何日もかかる事態は避けなければならない。互換性が検証されている組み合わせのほうが安心して顧客に届けられるという側面もある。
c-ClassやEVAに関しては販売から保守まで一貫してサポートできることがCTCの強みであり、さらに製造元である日本HPから包括的な技術支援が受けられる。
米HPではサーバー仮想化ソフトのVMwareとグローバル規模での協業を行っており、自社ハードウェアとの互換性やパフォーマンスを検証している。日本HPにおいても2005年12月から業界に先駆けてVMware製品に関する独自の検証を始めるなど、互換性の検証には特段に力を入れる。検証情報の一部はビジネスパートナーにも伝えられており、CTCは日本HPから得た情報をうまく使いながら、さらに独自の検証を行うことでシステム障害を未然に防ぐよう努めている。
CTCは昨年10月、ITインフラの構築を得意とする旧伊藤忠テクノサイエンスとデータセンター事業やアプリケーション開発を得意とする旧CRCソリューションズが経営統合して誕生した。新生CTCでは旧CRCソリューションズのデータセンターを活用し、顧客が必要とするITリソースを必要なだけ提供するオンデマンド型のサービス事業の拡大にも力を入れる。ここに拡張性が高い仮想化技術を導入すれば、初期投資を抑えながら、必要に応じてリソースを増やせるメリットを享受できる。
システムの構築や運用、拡張がスムーズに行える仮想化技術は、すでに欠かせない存在であり、CTCのビジネス拡大を強力にけん引する役割を担っているといえそうだ。