ソフトウェア開発のオフショア地域として、中国、インドに次ぎベトナムが脚光を浴びている。設備投資や人件費が中国に比べて安く、日本人と性格的に似ていることが理由だ。ソフト開発会社のユニコテクノス（福田威社長兼CEO）は、2004年にオフショア開発拠点として現地法人を設立するなど、早くからベトナムの有用性に注目。すでに、日本の大手SIベンダーにIT人材を派遣するなど、実績を出している。

　1972年に設立されたユニコテクノスは、業務・制御系や組込型システム開発などで実績を上げてきた。しかし、特に国内の組み込みソフト開発では、デジタル家電などの需要に供給が追いつかず、経済産業省の調べでは約7万人が不足している。他の組み込みソフト会社はここ数年、オフショア拠点を構築するため中国やインドへ進出しているが、「人件費が安いという理由で進出しているので、失敗も多い」（福田社長）という課題を抱えている。

　同社は04年12月、ベトナムのホーチミン市にオフショア開発や品質評価、人材派遣事業を行う現地法人を開設。翌年5月には、日本に造詣が深い経営者のベトナムITベンダー、コベカラとの合弁で、ITと日本語教育を行うUKブレインを設立し、数十倍の難関を突破した人材を毎年100人採用している。はじめの6か月間に集中的に日本語教育を施し、後半はデータマイニングや組み込み技術などIT教育を行っている。

　UKブレインで育成されたIT技術者は、日本のユニコテクノスで実際の業務に就くほか、日本の大手SIベンダーやコベカラへ派遣している。日本ではすでに、約60人のベトナム技術者が来日し、同社の業務と大手SIベンダー25社へ派遣され組み込みソフト開発の現場で活躍している。最近では、インドのITベンダーから「日本語が堪能な人材を派遣してほしい」と要請がくるほどだ。

　今年中には、ベトナムで最難関のホーチミン大学に「寄付講座」を設け、早期にIT人材候補を見つける取り組みを始める。「将来的には、100人月単位で派遣できる体制をつくる」計画で、6か月程度で一人前に育つスキームを構築する。福田社長は「日本のベンダーに派遣したベトナム技術者が現地へ戻り、日本とのブリッジSEになったり、地元のIT産業を担ってもらいたい」と期待している。