SaaS（Software as a Service）型で業務支援ソフトウェア「BizBase（ビズベイス）」を開発するアズベイス（奥野栄倫・代表取締役）は、「商談管理」機能を新たに実装した新版「営業マンが使うBizBase」の提供を開始した。顧客交渉の進捗など、商談や案件の状況確認・分析が瞬時にでき、携帯端末にも対応した。中小企業に浸透する弥生の販売管理ソフトにデータを取り込むことも可能。今年度（2007年12月期）は、新機能の搭載を機にチャネル販売を強化し、累計100社／1000ライセンスの導入を目指す。

■案件の進捗管理・分析可能に

　同社は06年1月に設立したベンチャー企業。「市販のグループウェアやSFA（営業支援システム）などは、中小企業で使いこなせていない」（奥野代表取締役）と、SaaS型などで既存製品と異なる簡単に使えるソフトをコンセプトにした主力の営業支援システム「BizBase」を開発した。累計100ライセンス（1ライセンス・2500円／月）を開発し、販売している。

　「BizBase」シリーズは、スケジュールや施設予約、掲示板などグループウェアの11機能に、通常業務で必須のワークフローや勤怠管理、交通費計算など業務支援4機能をプラスし、顧客側で自由に選択することができる。これに「商談管理」機能「営業マンが使うBizBase」と上位版の「同Pro」を加えた。

　「商談管理」は、商談の進捗や登録ができるほか、顧客との接触履歴やスケジュール登録・確認、名刺情報の参照などの機能をもち、これら商談・案件状況をパソコンや携帯端末から見ることができる。また、弥生が提供する販売管理ソフト「弥生販売シリーズ」の得意先台帳や仕入先台帳などをCSV形式で取り込む機能を搭載した。「同Pro」には、旅費・経費精算機能などを搭載し、承認データを弥生の会計、給与ソフトへ抽出ができる。

　同社は、11社のパートナー経由のチャネル販売を中心に拡販しているが、新たに東京・大阪・中部地区で新規パートナーの獲得を目指す。

　また、「OEMを前提にした作りになっているので、OEM提供も検討する」（奥野代表取締役）と、多岐にわたる方策で市場への浸透を図る方針だ。

　ソフト開発のエンプレックス（沢登秀明社長）は、CRM（顧客情報管理システム）の総合システムを完成させた。2000年に独自のCRMパッケージソフトを開発して以来、CRM専業ベンダーとして着実に成長してきたが、開発リソースに限りがあったことからサブシステム単位での段階的な機能拡充にとどまっていた。最後まで残っていたSFA（営業支援システム）の大幅な機能拡充をこのほど完了させたことで、名実ともに“総合CRMベンダー”として新たなスタートを切る。

CRM総合システムが完成
SFA機能の大幅強化図る

　同社のCRMは、主にSFAや顧客サポート、CMS（コンテンツ管理システム）、電子メール管理、EC（インターネット通販システム）などの複数のサブシステムから構成され、これをEIP（企業内ポータルシステム）で一元管理する構造になっている。

　ここ数年、ネット通販市場が堅調に伸びてきたことからECの引き合いが急増。まずはここに開発リソースを集中させてきた。これまでの納入顧客数250社余りのうち8割方がECを中心とするユーザーで、“総合CRMベンダー”に脱皮するためにはSFAなど他のサブシステムの強化が課題となっていた。

　今年5月にCRMの中核部分に相当するSFA機能を大幅に強化し、「国産唯一の統合型CRMパッケージソフトベンダーへの転換」（菊地正洋・副社長）にこぎ着けた。開発を先行させた影響もあって業績は一時停滞。一昨年度（06年11月期＝昨年度は12月1か月のみの変則決算）は前年度並みの15億円弱に甘んじることとなった。今年度（07年12月期）以降は大型商材を投入したことで、「年率3割増の勢いで伸ばす」と、攻めの姿勢に転じる考えだ。

　同社はキヤノン電子のグループ会社でCRM関連のシステム構築に強いSIerのイーシステムや、大手SIerの住商情報システムと資本業務提携を結んでおり、こうしたビジネスパートナー経由での販売増が期待できる。住商情報システムの主力ERPパッケージソフト「プロアクティブシリーズ」をはじめとするメジャーな業務ソフトとの連携を強化するなど、販売面や製品連携でのビジネスパートナーの拡充を進める方針だ。

　今年度は中核のSFA機能を含んだCRM案件でおよそ20件の受注を見込んでおり、来年度は受注件数を倍増させる強気の計画を立てる。EC分野ではすでにトップ集団入りを果たしており、SFAに関連したプロジェクト収支管理のサブシステムでも順調に受注を増やしている。

　企業の内部統制強化や個人情報保護など法制度への対応が一段落する来年度以降は、「CRMへの投資がさらに増える」ことが期待されている。需要拡大の波に乗るとともに、海外市場への進出を加速させることで、CRM分野でもトップ集団入りを目指す。