その他
生体認証、ブレイクするか
2007/06/11 14:53
週刊BCN 2007年06月11日vol.1190掲載
多様な機器への組み込み進む
生体認証システムを提供するベンダー各社が、一般オフィスや個人消費者など「多数派」への導入を模索している。生体認証といえば、体の特徴に左右され認証できない場合や、誤認識などのリスクを伴う場合もある。各社が一様に口を揃えるのは、期待したほどに導入率が高まっていないという点だ。そこで、指紋認証で表皮の下の「真皮」を読み取る技術や、一番認証率が低いとされる顔認証で赤外線を使った3D顔認証などで、各ベンダーが製品の強化を推し進めている。生体認証システムは、進取性が高く好奇心の強い企業が導入に踏み切る場合が多い。ブレイクポイントはどこにあるのだろうか。(鍋島蓉子●取材/文)
■市場は緩やかに伸びる
サイレックス・テクノロジーは、センサーモジュールの組み込みに力を注いでいる。金庫、複合機、決済システムなどさまざまな機器に組み込むことで市場を開拓していく。河野剛士社長は、「PCログインの製品なども手がけてきたが、エンベデッドが本命」と意欲を燃やす。
システムイオでは、入退室管理製品やICカードソリューションなどを提供するSIerと連携して一般オフィスへの導入を進めていく。「将来的には、クレジットカード決済に顔認証を活用したい」(大澤健三副社長)考えだ。
静脈認証を中心に手がける富士通は、ATM(現金自動預払機)などに対してセンサーを3万台出荷した。代居智彦・ビジネスインキュベーション本部プロジェクト統括部長は、「生体認証は爆発的に伸びるわけではない」とする。「静脈などは金融機関に導入されて認知が広がったが、それでも知っている人の数はまだ少ない」。そのため、「いかに個人消費者が理解するかが普及のカギ」とみている。加えて、生体認証が個人情報の流出事件などセキュリティにかかわるインシデントで導入率を伸ばしてきた点に言及して、「導入率を伸ばす要因の一つとしてJ-SOX法があげられる。来年が施行予定であることからも、今年の取り組みが重要になってくる」としている。
これまでは、特定分野や先端技術を積極的に取り入れるユーザー企業のみが導入していたが、各社ともに「今年の動き次第で、導入率を引き上げることが可能」と口を揃える。
■生体認証で「定期券」
ユーザー企業のすそ野が徐々に広がっているのも事実だ。一般消費者に利用シーンを提供するという点で、生体認証システムをいち早く取り入れた例では、「はなまるうどん」のはなまるが記憶に新しい。同社は、2005年11月から指紋認証を使った「うどん定期券」の試験導入を始めた。手ぶらで利用できる点がメリットで、来店客には指紋の登録で利用可能となる“指の定期券”を1000円で提供し、1か月間全品105円引きで食べられるサービスを付加している。同社にとっては、リピーターの拡大が狙いだ。
「1日何度も食べられる定期券を販売するにあたり、生体認証は定期券を複数人で使い回すことを防ぐための手段でもあった」と、はなまるの担当者は話す。実際、試験的に導入してみると、設備投資がかなりかかるうえ、投資回収には何か月も定期券サービスを続けなければならないことで投資対効果が明らかではないため、現在は磁気カードに切り替えている。「今は新たな使い道が見いだせないため、当面は導入するつもりはない」としているが、「最近は生体認証の技術がゲームセンターなどでも導入されてきた。非接触センサーなど性能自体も向上している」としており、生体認証の技術自体は認めているようだ。
■将来を見据え専任体制で
将来的な生体認証の利用シーンでは決済なども考えられる。というのも、現金に代わるものとしてICカードが爆発的に普及しているためだ。カードに多いのが盗難による犯罪。なかでも、クレジットカードは偽造カードよりも盗難カードによる犯罪がはるかに多い。となれば、次に導入される技術は生体認証といえよう。本人を確認するためのデータをどのようにカードに組み込むのか、誰が管理するのか、インフラを構築するための壁をどう乗り越えるか、など課題はある。しかし、クレジットカードに生体認証データを入れることで、決済時の本人確認が可能であることから、セキュリティ強化につながるのではないだろうか。
今年後半から来年にかけては、「ロッカーなど一般消費者が生活に使う機器などにも組み込まれるフェーズへと移るだろう」と富士通の代居統括部長は指摘する。
市場は緩やかとはいえ確実に伸びてきている。
一般消費者が金融機関のATMや携帯電話など生体認証システムに触れる機会が徐々に増えてきているが、まだまだ利用できる端末が少ないのが実態。ただ、利用シーンが広がれば確実に生体認証の活躍の場が広がる。そうなれば、ベンダーにとって大きなビジネスチャンスになる可能性を秘めている。
続きは「週刊BCN+会員」のみ
ご覧になれます。
(登録無料:所要時間1分程度)
新規会員登録はこちら(登録無料)
ログイン
週刊BCNについて詳しく見る
- 注目のキーパーソンへのインタビューや市場を深掘りした解説・特集など毎週更新される会員限定記事が読み放題!
- メールマガジンを毎日配信(土日祝をのぞく)
- イベント・セミナー情報の告知が可能(登録および更新)
SIerをはじめ、ITベンダーが読者の多くを占める「週刊BCN+」が集客をサポートします。
- 企業向けIT製品の導入事例情報の詳細PDFデータを何件でもダウンロードし放題!…etc…