その他
日本IBMのSOAパートナー戦略 シェア拡大に全力を注ぐ
2007/07/23 21:10
週刊BCN 2007年07月23日vol.1196掲載
日本IBM(大歳卓麻社長)がSOA(サービス指向アーキテクチャ)対応ミドルウェアのシェア拡大に力を入れている。これまでにもIBM製ミドルウェアを採用するISVやSIerは多かったものの、率先してSOA機能を取り入れるケースは依然として少数にとどまっていた。営業や技術面で全面的に支援することで有力ベンダーに採用を強く働きかける。自社製のSOAプラットフォームをより多くのベンダーに採用してもらうことで同分野における主導権の強化を狙う。(安藤章司●取材/文)
有力ベンダーを支援 ■SOA基盤の採用進む 業務アプリケーション同士をXMLウェブサービス技術などを駆使して有機的に連携させるSOAは世界規模で採用が広がっている。IBMでは大規模業務システムを構築するアーキテクチャの本流と位置づけ、自社製ミドルウェアのSOA対応を促進。アプリケーションサーバー「WebSphere(ウェブスフィア)」のSOA対応やデータベース「DB2」のXML対応など基盤技術の強化を図っている。 すでに先行的にIBMとの連携に乗り出すISVも出てきており、「この流れを加速させる」(日本IBMの古長由里子・ソフトウェア事業ISV&デベロッパー事業推進部長)ことで主導権を確保したい考え。ISVやSIerにとってもSOA基盤を自ら構築しなくても済み、本来得意とする業務アプリケーションにリソースを集中できるメリットがある。IBMグループの持つ強力な営業力、技術力を活用できるのも魅力だ。 帳票システム開発で業界トップクラスの実績を持つウイングアークテクノロジーズは、今年に入ってSOAのサービス同士を高速で接続するWebSphereのサービス伝送路を採用した。 SOAは業務アプリケーションを“サービス”とみなし、複数のサービスをXMLウェブサービスなどで結びつけることで柔軟なシステム構築を可能にしている。この“結びつけ”にWebSphereの高速サービス伝送機能Enterprise Service Bus(ESB)を活用。「短期間でかつ処理速度が早いシステムが開発できる」(ウイングアークテクノロジーズの小島薫・技術本部長)ようにした。■XML専用ハードも投入 生産管理システム開発で急成長するクラステクノロジーも、今年に入ってからWebSphereのXMLデータの高速変換機能を採用。生産管理に使うデータをXML形式でやりとりするのに使うためだ。XMLは非常に柔軟なデータ構造であるため、アプリによって形式が異なることが多い。通常はデータ変換サーバーを置いて変換しているが、処理速度が遅いことが課題だった。 これを解決する方策として日本IBMが昨年秋に本格投入した「DataPower SOAアプライアンス」を使うことにした。WebSphereシリーズの1製品だが、ソフトウェアではなく、小型の専用ハードウェア製品に仕上げてある。XMLデータ変換に特化したもので、「通常の汎用サーバーで組んだ場合に比べて処理速度が飛躍的に速い」(日本IBMの佐々木悦夫・WebSphere事業部High Valueソリューション担当営業部長)のが特徴だ。 生産管理で中核となる情報は部品表のデータだが、クラステクノロジーではこれまで分散しがちだった部品表を統合化し、設計から製造、品質まで一元的に管理できる強みを持つ。ただし、部品表データが増えてくると、「XMLデータの変換速度がボトルネックになる」(クラステクノロジーの福手健二・プロダクトサービス部長)課題があった。SOAを推進していくうえでXMLデータの変換速度の向上は避けて通れないだけに、この分野で強い日本IBMと組んだ。■海外でもメリット強調 技術的な課題の解決だけではない。ISVやSIerにとって日本IBMのパートナー支援策を活用することで国内外での事業拡大のきっかけをつかむメリットがある。パートナー支援策はグローバルで共通したものが多く、ISVなどを対象にした支援プログラム「パートナーワールドインダストリーネットワークス(PWIN)」(上掲図)もそのひとつ。海外の主要なIBM拠点でも国内同様の支援が受けられるのが特徴だ。 PWINパートナー全体のうち、実際にIBMプラットフォームの採用実績のあるのは国内約200社。このうち率先してSOA機能の採用に努めているパートナーは「まだ少数にとどまっている」(古長事業推進部長)のが実情だ。グローバル規模での支援策を用意することで、IBMプラットフォームの採用実績のあるパートナー数を今後2年程度でまずは倍増させる目標を立てる。 SOAはもともとオープンな業界標準の仕様であるため、IBMだけが独占できるわけではない。他のミドルウェアベンダーもSOA対応に力を入れていることからシェア争いが激化するのは必至。有力な業務アプリケーションパッケージを持つISV、SIerをどこまで取り込めるかが、今後のビジネス展開を大きく左右しそうだ。
日本IBM(大歳卓麻社長)がSOA(サービス指向アーキテクチャ)対応ミドルウェアのシェア拡大に力を入れている。これまでにもIBM製ミドルウェアを採用するISVやSIerは多かったものの、率先してSOA機能を取り入れるケースは依然として少数にとどまっていた。営業や技術面で全面的に支援することで有力ベンダーに採用を強く働きかける。自社製のSOAプラットフォームをより多くのベンダーに採用してもらうことで同分野における主導権の強化を狙う。(安藤章司●取材/文)
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