その他
富士通 流通維持型のSaaSモデルを構築
2008/03/03 21:10
週刊BCN 2008年03月03日vol.1225掲載
富士通(黒川博昭社長)は、国内大手SIベンダーの先陣を切り「SaaSサービス」を2月から順次開始した。従来、中堅・中小企業(SMB)向けに展開していたパッケージの「箱売り」ビジネスからの脱却を狙う。ただ、国内SaaS市場は、立ち上がり前であるため、3年後をめどにSaaSを利用した「新たなビジネスモデル」の構築を目指す。新モデルでは、ISVやSIerのパートナー、自社SE子会社などの既存流通網を維持することを明言。まずは、パートナーにSaaS基盤や開発・検証の場を提供、本格的な展開に向けた準備作業を進める。(谷畑良胤(本紙編集長)●取材/文)
「箱売り」脱却は至上命題
3年後をめどに明確化へ
■まずはSaaS基盤の提供から
2月初旬に富士通が第一弾として公表した「SaaSサービス」は、パートナーとの「共創モデル」と銘打っている。複数のサービスがISV向けを中心に順次提供される予定だが、当面はISVに「場所貸し」するための群馬・館林市のデータセンターにあるSaaS実行基盤を提供する「SaaSプラットフォームサービス」を推進力にする。同基盤に乗せるISVのサービスを開発するために東京・浜松町の「Platform Solution Center」で技術支援する「SaaSアプリケーションサービス」を提供。富士通の「SaaSプロデューサ」50人がビジネス立ち上げをバックアップし、同基盤を利用するサービス数を増やす。
すでに、SMB向けの業務ソフトウェアで強みを持つオービックビジネスコンサルタント(OBC)や応研、ピー・シー・エー(PCA)、弥生のほか、サイボウズなど9社が賛同を表明。「まずはSaaS基盤を提供し、今後の展開を模索する」(横山耕三・SMEアウトソーシング推進部部長)方針だ。
SaaS基盤を提供する一方で、各ISVで異なるビジネス展開や製品仕様、流通網、販売パートナーに支払うインセンティブなどを考慮し、各ISVに即した技術支援やマーケティング展開をサポートする。「小規模のISVで資金力が不足しているためにSaaSサービスを始められないベンダーにはチャンスになる」(横山部長)と、新規パートナーの獲得を目論む。また、「ISVは、当社と一緒に世界へ技術を発信できる」と、SaaSの世界展開も示唆する。
■新たな収益モデル構築が前提
富士通はISV向けに現在、パートナープログラム「パートナーアリーナ」を行っている。ISVのソフトに富士通のミドルウェアやサーバー、ストレージなどを組み合わせ事前検証し、「Piテンプレート」という高品質で短期間に導入可能なテンプレートを開発し、SMBなどへ導入してきた。このテンプレートを販売するのは、富士通の系列パートナーであるSIerや全国にある自社SE子会社などであった。今回の「SaaSサービス」では、「今のところ、場所を貸すだけで、販売に関してはISVが持つ流通網に乗せる」(横山部長)と、「パートナーアリーナ」の流通網と異なる展開をする。
しかし、「SaaSを売る場合、従来のように『箱売り』型の販売方法にはならない。既存の販売パートナーや自社SE子会社にユーザー企業視点に立ったコンサルティングやBPO(ビジネスプロセスアウトソーシング)的な観点など、新たに上流工程のノウハウを持ってもらう必要がある」(横山部長)と、既存の販売パートナーにSaaSを販売するスキームが整備され次第、「SaaSサービス」が拡大局面に向かうという。
販売パートナーにとっては、「Piテンプレート」を販売する際、サーバーなどハードウェア、ソフトのインストールや構築作業などで収益を得ることができた。しかし、「SaaSサービス」になると、こうした作業収益は見込みにくく、新たな収益モデルを構築する必要がある。横山部長は「ユーザー企業のニーズは、導入費用や運用・管理コストが低減できるSaaSに向いている。ハード売りが減り、販売パートナーの粗利益は目減りするが、ユーザー数を増やすことはできる」と話す。同社は今後、ISVが持つソフトを複数組み合わせてシステム提案する仕組みなどを考案し、収益アップにつながる方式を模索する考えだ。全国に盤石なソフト販売網を持つ同社に期待するISVは多く、早期に既存流通を維持したSaaSビジネスモデルの構築が待たれる。
富士通(黒川博昭社長)は、国内大手SIベンダーの先陣を切り「SaaSサービス」を2月から順次開始した。従来、中堅・中小企業(SMB)向けに展開していたパッケージの「箱売り」ビジネスからの脱却を狙う。ただ、国内SaaS市場は、立ち上がり前であるため、3年後をめどにSaaSを利用した「新たなビジネスモデル」の構築を目指す。新モデルでは、ISVやSIerのパートナー、自社SE子会社などの既存流通網を維持することを明言。まずは、パートナーにSaaS基盤や開発・検証の場を提供、本格的な展開に向けた準備作業を進める。(谷畑良胤(本紙編集長)●取材/文)
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