その他
米IBM「IMPACT2008」で提言 SOAで“攻めの経営”必須に
2008/04/21 14:53
週刊BCN 2008年04月21日vol.1232掲載
米IBMは、このほど開催したSOA(サービス指向アーキテクチャ)関連の年次カンファレンス「IMPACT2008」で、「SOA」の必要性を改めてアピールした。ITシステムの再構築に際して“攻めの経営”の要素を盛り込む需要が顕著に現れているからだ。そのために、IBMはSOAの提供領域を広げる新コンセプト「Smart SOA」を掲げた。こうした波が押し寄せている一方、各国に落とし込む実装段階では課題も多い。果たして、日本市場で浸透していくのだろうか。(佐相彰彦●取材/文)
日本市場での浸透はいかに!?
■技術のアピールは終わった 戦略・ITの連携時代が色濃く
今回の年次カンファレンスでIBMが訴えたかったのは、ベンダーが経営や業務と直接に結びつくためのITシステムをいかに提供できるかということだ。そのためにSOAの範囲を広げようと「Smart SOA」を提唱。ベンダーサイドとしては、BPM(ビジネス・プロセス・マネジメント)を意識しながらビジネスを手がけることが重要だとしている。
ソフトウェアグループのエグゼクティブであるスティーブ・ミルズ・シニアバイスプレジデントは、「SOAは、アプリケーションを連携させる(≒EAI)という観点から生まれた。これは本来ならば、ユーザー企業の視点に立った考えで提供するべきだが、これまでは技術ありきのアプローチが多かったといえる。今後は、ユーザー企業の立場で取り組むべきだ」と指摘。それを実現するのが同社の「Smart SOA」だとしている。
こうした考え方に切り替えたのは、「ユーザー企業が求めるITシステムを突き詰めていくとSOAに達するから」という。ユーザー企業の導入準備は整っているというわけだ。それだけではなく、「パートナーであるSIerの多くも、ユーザー企業の声を聞いた段階でSOA対応ソリューションが最適と意識している」とし、“SOA Ready(準備が整う)”と現状を表現する。
「売る側と購入する側の双方を意識しながら、製品を開発していくことがメーカーの使命」とアピールしており、SIerとユーザー企業への適応を追求した新製品をカンファレンスで発表した。
その第1弾が今年6月までに発売する予定の製品である「IBM BPMスイート」だ。これまで個別に提供していたBPM関連製品を統合したのが特徴。また、「ウェブスフィア・ビジネス・イベント」も発売予定で、プロセス間で発生するメッセージやタスク交換を、ユーザー企業がリアルタイムに特定・分析できるようにする。
■多彩なシステム導入事例 日本企業が導入するケースも
マーケットが“SOA Ready”の状況とIBMは分析しているわけだが、では実際のビジネス面で果たして効果を出しているのか。
SOAやウェブスフィアの戦略立案を担当し、チャネルやマーケティングの責任者であるサンディ・カーター・シニアバイスプレジデントは、「多くの導入事例がある」とアピールする。SOA関連ビジネスとして、すでに6550以上のシステムを提供。これにより、「(売上高は)46%の成長率を遂げている」と自信をみせており、着実にビジネス拡大路線をたどっていることを示唆する。
実際、カンファレンスでのキーノートスピーチではゲストスピーカーとしてユーザー企業が登場するケースが多かった。オープニングセッションでは、ハーレー・ダビッドソンのジム・ヘイニーCIOが登壇。同社は、顧客対象のウェブサービス拡充にSOAを積極活用した。ウェブサイトを通じて顧客にツーリングのルート検索サービスを提供。ホテルの予約やガソリンスタンドの情報配信なども可能だ。そのインフラがSOAとなる。ヘイニーCIOは、「顧客視点のサービスを行わなければならない。突き詰めていったところ、SOAが適していると判断した」と採用の経緯を語る。ヘルスケア関連サービス会社のHCSCは業務フロー改革に際しSOAに対応。オースティン・ワルドロン・シニアバイスプレジデントは、「赤ちゃんが“ハイハイ”から徐々に歩き出すように、段階を踏んでSOAを取り入れることが望ましい」とユーザーの立場から無理のない導入手順を伝えてくれた。これは、「私はITに関しては全く無知だからこそ」としている。SOAはビジネス・プロセスに対応して実装・追加していくのが最良であることを物語っているわけだ。
個別セッションでは日本企業の講演もあった。ゲーム会社のセガは、ユーザー向けウェブサービスと社内の基幹システム連携の際にSOAを視野に入れた。そこで、SIerのユーフィットとの二人三脚でシステムの抜本的な改革に乗り出している。
ユーザー企業に共通していたのは、SOAありきではなく、ビジネス・プロセスの改善を模索した結果、SOAにたどり着いたというものだ。ベンダー側としては、「何のためにITシステムをユーザー企業に対して提供するのか」という基本概念を改めて考えなければならない時代がきたことを物語っている。ただ、日本市場の場合は“スパゲッティ構造”と表現されるように他国と比べてカスタマイズを繰り返した結果、蓋を開けてみるとユーザー企業のシステムが複雑というケースが多い。CIOを配置してITと経営を常に見据える傾向も高くなってきているが、欧米に比べればまだまだというのが実情だ。
IBM日本法人にとっては、こうした状況を踏まえたうえで販売パートナーであるSIerの支援を強化することがビジネス拡大のカギになる。
米IBMは、このほど開催したSOA(サービス指向アーキテクチャ)関連の年次カンファレンス「IMPACT2008」で、「SOA」の必要性を改めてアピールした。ITシステムの再構築に際して“攻めの経営”の要素を盛り込む需要が顕著に現れているからだ。そのために、IBMはSOAの提供領域を広げる新コンセプト「Smart SOA」を掲げた。こうした波が押し寄せている一方、各国に落とし込む実装段階では課題も多い。果たして、日本市場で浸透していくのだろうか。(佐相彰彦●取材/文)
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