その他
IPA・SEC 新しい中期事業計画がスタート
2008/04/28 21:10
週刊BCN 2008年04月28日vol.1233掲載
情報処理推進機構(IPA)のソフトウェア・エンジニアリング・センター(SEC、鶴保征城所長)は、ソフト開発産業の構造改革を加速させる。ソフトウェア工学を切り口として、情報システムの信頼性の向上や多重下請け構造の是正に取り組む。SECにはこれまでITベンダーや学術機関など130社・団体がボランティアで参加し、ソフト開発の基盤を整備してきた。改革の重要性を訴えていくことで、今後5年のうちに「SECの活動への参加数を少なくとも300社・団体に増やす」(鶴保所長)と、活動の幅やボリュームを拡大させていく方針。(安藤章司●取材/文)
ソフト産業の構造改革を加速
■グローバル規模で競争が激化
ソフトウェア開発産業はさまざまな課題を抱える。SECが発足した2004年以降も金融や公共交通機関、電気通信などの社会インフラで、ソフトに起因するトラブルが相次いだ。ソフト開発の件数や複雑さが増し、多重下請け構造からくる品質の劣化や人材育成の遅れも目立つ。これに追い打ちをかけるようにインドなど新興の有力SIerが勢力を伸ばし、グローバル規模での激しい競争にさらされる。
今年4月からスタートしたSECの第二次5か年中期事業計画では、システムの信頼性やセキュリティ、産業構造の課題解決に重点を置く。ソフトウェア工学の側面から産業構造の転換を進める。具体的にはソフト開発手法の標準化を推し進め、標準基盤に基づいて技術者がスキルアップできる体制を整える。国内でとりまとめた手法は国際的な標準化活動に反映。日本発のグローバルスタンダードを増やすことでソフト開発における主導権を握る。
例えば、NTTデータや富士通など主要ITベンダー9社が今年3月に策定した設計手法の標準ガイドライン「発注者ビューガイドライン」をSECの標準プロセス「SLCP(ソフト開発の共通フレーム)2007」などに取り込み、国際標準への反映を目指す。ソフト工学の整備、標準化を進めることが、「グローバル競争での勝ち残りにつながる」(鶴保所長)と、産官学の力を結集。国際的な標準化として認められる働きかけをより強める。
■将来的に1000社参加呼びかけ
このためにはSECの活動へのより積極的な参加が欠かせない。昨年度は約130社・団体、およそ400人の技術者が集まり、タスクフォースに分かれて作業に従事。それでも、輸送サービスや電力、電気通信など社会インフラと深く結びついた業種・業態に踏み込んだ活動にはまだ十分に及んでいない。新しい事業計画では「業界の壁や所轄官庁の違いを乗り越え、横断的に整備する」。今後5年間で300社・団体の参加を促し、将来的には「1000社の参画を念頭に置く」と、幅広い活動を展開する方針である。各社のスキルや特色を伸ばすことで多重下請けからの脱却を促す。
成長著しいインドの大手SIerに目を向けると、ソフト開発の成熟度モデルを示す国際標準CMMIの最高レベルを取得するなど標準化の取り込みに積極的だ。標準プロセスを重視することによってソフト開発の生産性を高め、業績拡大に結びつける。一方で、標準プロセスを当てはめにくい下請け開発とは距離を保つ。日本にも進出するタタコンサルタンシーサービシズやインフォシスなども、自ら元請けになることを重視。日本の大手SIerとは“対等のパートナー”だと口を揃える。
これまで標準化に馴染みが薄かった日本市場を、標準化・元請け重視のインドSIerがすぐに席巻できるわけではないだろう。だが、ソフト工学に基づく標準化をおろそかにしたままでは、「国内ソフト産業はいずれ大きく立ち遅れる」との危惧もある。特徴のない相似形の中小ソフト開発会社が、多重下請け構造のなかでひしめく日本のソフト産業構造では、「生産性に限界が見えている」。1社でも多くのベンダーに参加を促し、協力を得ることで特徴ある技術の習得方法や、人材育成の手法をソフトウェア工学に基づいて追求する。
SECの活動を“三段跳び”にたとえると、「第二期の事業計画は“ステップ”の段階」と位置づけて、次の大きな飛躍に向けて力を蓄える。
情報処理推進機構(IPA)のソフトウェア・エンジニアリング・センター(SEC、鶴保征城所長)は、ソフト開発産業の構造改革を加速させる。ソフトウェア工学を切り口として、情報システムの信頼性の向上や多重下請け構造の是正に取り組む。SECにはこれまでITベンダーや学術機関など130社・団体がボランティアで参加し、ソフト開発の基盤を整備してきた。改革の重要性を訴えていくことで、今後5年のうちに「SECの活動への参加数を少なくとも300社・団体に増やす」(鶴保所長)と、活動の幅やボリュームを拡大させていく方針。(安藤章司●取材/文)
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