IBMが「サービスマネジメント」を提供していくうえでポイントにしているのは、「Visibility(可視化)」をはじめとして「Control(管理性)」「Automation(自動化)」の3つ。これは、「ITの活用で現状を把握し、プロセスに対する投資を効率的に管理する。最終的には自動化で運用プロセスの最適化を図って成長につなげる」(ソフトウェアグループのスティーブ・ミルズ・シニア・バイスプレジデント)との考えからだ。

では、実際にIBM製品の導入でユーザー企業は効果を実感できているのだろうか。
MetroPCSでは、Tivoliを導入したことで「『Visibility』を高めることにつながっている」(ロドニー・キャストン氏)と評価する。同社は、米テキサス州に本社を置く通信事業者。携帯電話事業などワイヤレスサービスを主軸に置いており、月額30ドル(約3300円)で使い放題の料金プランを設定するなど、価格面で他事業者との差別化を図っている。これまで競争の激しいマーケットで生き残ってきたが、「故障や事故などが発生した際の解析を行う“フォルト・イベント・マネジメント”を確立していなかった」と打ち明ける。
しかも、「ユーザーからの問い合わせ対応の際など、外部データリソースとの連携もとれていなかった」という。そのため、加入者の問い合わせに対して迅速な処置が行えなかったこともある。価格競争が一段と激しくなれば、さらに安い料金プランを提供しなければならない。体力勝負の消耗戦になることは必至で、そのためには今ある資産をいかに成長に結び付けられるかがカギとなってくる。「顧客対応や原因分析の迅速化を追求していかなければならない」。そこで、今年早々にTivoliを導入した。
管理ソフトの導入にあたり、IBMだけでなくコンピュータ・アソシエイツやヒューレット・パッカードなどの製品も検討したそうだ。結果、キャストン氏は、「最適なインタフェースはTivoliだった」と言い切っている。
MetroPCSを顧客として獲得したことは、米IBMにとってサービスマネジメント事業拡大に弾みがついた1案件でもある。IBMでTivoli担当マネージャーを務めるピエール・コーニー氏は、「MetroPCSのパートナー企業として、ともに成長していく計画を立てていきたい」考えを示す。米IBMがサービスマネジメントを掲げるようになったのは、製品を単に提供する立場ではなく「パートナーシップと位置づけたから」(同)とアピールする。
MetroPCSがIBMに期待しているのは、「(通信事業者向けソフトである『Netcool』など)買収した製品を統合して欲しい」(キャストン氏)ことだとしている。製品統合により、一段と領域を広げたソリューションを提供できるようになれば、サービスマネジメント分野で主導権を握ることにもつながることだろう。(佐相彰彦●取材/文)