その他
変貌するSIerのDC事業
2008/07/14 14:53
週刊BCN 2008年07月14日vol.1243掲載
サービス型への移行進む
ビジネスモデルの見直し盛んに
SIerのデータセンター(DC)ビジネスが変わろうとしている。顧客企業のIT機材をDCに預かる従来型のアウトソーシングモデルから、SIer自身のITリソースをサービスとして提供する動きが顕在化。新設DCを中心にサービスモデルへの移行が本格的に始まっている。IT機材の高度化・高集積化が進んだことで、電源や空調などのDC設備の投資は加速度的に膨らむ。従来型モデルでは投資回収に時間がかかることが、ビジネスモデルの見直しを推し進める背景にある。(安藤章司●取材/文)
■DC設備の見直し迫られる
大手SIerはIT機材の高集積化に対応するため、電力供給力を大幅に向上させた新しいDCの建設や増設を積極的に進める。メインフレーム時代は1ラックに換算してせいぜい1-2kVAの電力で済んだ。だが、高集積のブレードサーバーが一般化した今では、1ラックあたり6-8kVAは必要とされる。消費された電力は熱に変わるため、冷却する空調設備の能力アップも欠かせない。設備への投資額は膨らむ一方で、効率よく回収するためのビジネスモデルの再構築が重要課題として浮上している。
これまでSIerのDCビジネスは、顧客のIT機材を預かり、保守運用を請け負うことで収益をあげてきた。高集積化に対応した新DCでは“採算の合うギリギリの設備投資”を行っているケースが多い。持ち込み型ではIT機材の規格にばらつきが出て効率性が低下。投資回収が遅れる可能性がある。そこで登場したのが、IT機材をSIer側で用意するマネージドホスティング型のビジネスモデルだ。
NTTデータは現在、既存DCの一部分およそ300ラック分の改修作業を進めている。10億円近い投資を行い、1ラックあたりの電力は6kVAまで高める。効率のいい直流電源装置も一部採用する。本来ならば8kVAにすることも検討したが、「DC全体の設計を見直さなければならないため見送った」(NTTデータの高田久寿・データセンタ営業担当部長)というように、コストとの兼ね合いを優先せざるを得なかった。
■採算が合うギリギリの投資
高規格の設備を揃えた新DCでは、マネージドホスティングモデルの採用も検討する。NTTデータは、SIerとしては国内最大級の全国18か所、延べ床面積で68万m2のDCを運営するものの、内訳は顧客のIT機材を預かる従来型が多くを占める。マネージドホスティング型なら、設備能力を最大限に引き出せるばかりか、土地代の高い都心に大規模なDCを設置する必要性も薄れる。
伊藤忠テクノソリューションズ(CTC)が今年10月に稼働させる1000ラック規模のDCは、標準電源で6kVAを供給する。高集積のブレードだと6kVAでも足りなくなる可能性があるが、「コスト的には採算が合うギリギリの投資」(CTCの唐木眞・DC事業企画室事業開発部長)と話す。設計上は直流電源を併用するなどして8-10kVAまで拡張できるようにするが、それだけの収益力があるビジネスモデルの構築が欠かせない。
高密度でブレードサーバーを収容できるDC設備は高額な投資が必要であり、顧客企業が単独で持つのは費用対効果が悪い。これまで顧客自身で運用していたサーバー群を統合し、SIerが運用する高規格なDCに預ける動きが活発化。新型DCへの需要が急拡大している。そのうえで、「さらに効率化に一歩踏み出したリソースオンデマンドのフェーズに入る」(唐木部長)と予測。DC内部はSIerが独自に設計・構築し、顧客が必要とするITリソースのみを提供するサービス形態である。
■SaaS、オンデマンド採用も
富士ソフトは1ラックあたり7kVAを供給する最新鋭の東京・秋葉原のDCを使い、今年10月からSaaSビジネスを始める。100ラック規模のリソースを割り当てる予定で、現在、サービスメニューを詰めている段階だ。グループウェアやワークフロー、営業支援など、「まずはSaaSに馴染みやすい情報系システムのメニューづくりに重点を置く」(富士ソフトの英雄・アウトソーシング事業本部長)考えだ。NTTデータでは、比較的規格が統一されているネット通販などのEC(電子商取引)システムの提供を念頭に置く。
インターネットのフロントエンドシステムに強い京セラコミュニケーションシステム(KCCS)も10月からサーバー・ストレージのオンデマンドサービスを始める。仮想化技術を使い納期は最短2営業日。1か月単位の契約が可能で、「必要なときに必要なだけ」(KCCSの松木憲一取締役)ITリソースを調達できる。ITホールディングス(ITHD)は次世代DCの効率的な運用に向けてSaaSやPaaSなどの「オンデマンド型ビジネスモデルの研究」(ITHDの石井貞行・執行役員)を進める。
IT機材の高性能、高集積化によってDC設備の投資額は増え続ける。従来型のビジネスモデルではDCの運用効率は上がらず、投資回収が遅れる可能性がある。新DCでは投資額に見合う高い収益力が求められており、その解の一つが1つのリソースを複数の顧客で共有して使うマネージドホスティングやリソースオンデマンドサービスだ。SaaSのアーキテクチャとも共通項が多い。物理的なDCの建設だけでなく、SIerのビジネスモデルそのものの見直しが急ピッチで進む。
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