その他
“踊り場”にきたSMB向け業務ソフト業界
2008/08/11 14:53
週刊BCN 2008年08月11日vol.1247掲載
商談の長期化などが阻害要因 中堅・中小企業(SMB)向け基幹システム市場が“踊り場”に差し掛かっている。国内経済の先行き不安などを理由に、多くの企業が会計システムなど業務ソフトウェアの利用期間を延長する傾向が見られ、リプレース需要などをつかみにくいことが要因だ。マイクロソフトの次世代プラットフォーム需要も「当面は期待薄」で、「しばらくは我慢が続く」というISV(独立系ソフトウェアベンダー)が大勢を占める。このため、法改正のある特定分野へ攻勢を強めたり、来年3月までの“駆け込み需要”を期待し販売パートナーのテコ入れを開始するなど、大幅な戦略転換を急ピッチで進めている。(谷畑良胤(本紙編集長)●取材/文)■相次ぐ減益 再度パートナー強化 業務ソフト最大手のオービックビジネスコンサルタント(OBC)が7月24日に発表した2008年度(09年3月期)第1四半期の決算(単体)は、業界全体に衝撃を与えた。上昇一途だった同社の業績は、売上高が約38億円で前年同期に比べ5.9%減り、研究開発費の増加が響いて営業利益が同39.1%減(約8億円)と、大幅な減収減益となったためだ。 この要因について、OBCの仁藤丈久・営業本部営業企画室室長はこう話す。「昨年10月に発売した最上位製品『奉行V ERP』に営業シフトしたため、スタンドアロン製品の売上高が減少した」。下位製品に比べ商談の期間が長くなる傾向のある「奉行V ERP」への戦力集中が裏目に出た形だ。 これまで「内部統制対応」を主なテーマにしてきた同社は現在、「付加価値の高いソリューション提供」を謳い文句に、中小企業向けに会計周辺ソフトや機能の個別相談を強化し始めた。さらに、「従来やってきた販売パートナー支援を徹底する」(同)と再度“販社回り”を強化している。 OBCと同じく株式上場するピー・シー・エー(PCA)の08年度(09年3月期)第1四半期業績も、SaaS(Software as a Service)サービスの初期費用負担が影響し営業利益が1億3300万円、前年同期比43.4%の大幅減益となった。売上高は約14億円と微増の同0.8%で落ち着いたが、「市場が待ちの状態。案件の数は減っていないが、商談が2-3か月は伸びている」(折登泰樹・専務取締役)という感触だ。予想に反して昨年度末までに積み上げた見込み案件の刈り取りが進んでいない状況のようだ。 ただ、PCAは「SaaSサービスを他社に先駆け事業化したことで、販売パートナーにクライアント/サーバー型、スタンドアロン型などに加え、提案の選択肢を広げることができている」(折登専務)として、先行投資分が新規案件やリプレース需要を生む材料になりつつあり、ここ数か月の悪循環が解消しそうとみる。また、今年12月1日に施行される「新公益法人制度改革関連三法」で、公益法人会計基準の整備が必要となり、約7000の公益法人へ会計システムなどを導入しているトップシェアの同社は「今期から来期にかけて、制度改正需要が継続的に期待できる」(同)と、特定分野への注力が奏功し、窮状をしのげる見通しだ。■得意分野を開拓 上位層にも食指 公益法人向けでは、PCAに次ぐ業界2位の応研も、12月1日の改正法施行に向け追撃を開始した。岸川剛・取締役は「公益法人の第三者機関との連携を強め、他社リプレースを本格化している」と話す。同社では、得意分野の建設業界で「工事進行基準」、福祉業界の新会計基準への対応に向けた需要獲得を図っている。岸川取締役は「いまは我慢の時。得意分野で売り上げを稼ぎ、次年度に向けて訪販系の販売会社やSIerへの支援に時間を費やしている」と、大手メーカー系列のSIerなどとアライアンスが深まったことで、次のステップに向けての手応えを感じている。 昨年10月にエントリー向けのERP(統合基幹業務システム)である「SMILEis」を新シリーズとして投入したOSKは、「従業員100人以下の層を狙っていたが、全体の案件が減り、競合が激しくなっている」(小野隆司・第二パートナー営業部部長)とみている。買い換えのタイミングを見込んだものの、計画よりも伸び悩んでいるのはそのため。それでも、売上高ベースで前年度(08年12月期)に比べ10%以上は増加しそうだが、「5年リースが増えている」(同)と商談が伸びていることを背景に、年商10-100億円超の上位層を狙う新しいERP「SMILE BS」などで、攻め方を転換した。 さらに同社は、「SMILEis」からSQLサーバーだけでなく他のデータベース(DB)とも接続できる「マルチDB」を採用したため、いままでなかった日本IBM系列のSIerの「商流」が構築されつつある。「IBMユーザーに『DB2』環境でのリプレース需要が出てくるのでは」(小野部長)と期待する。同社は最上位版のERPを来年早期にもリリースし、上位層の獲得に弾みをつける考え。 一方、マイクロソフトの新プラットフォーム需要に関して、これらISVは慎重な姿勢を崩していない。新環境でパフォーマンスが上がることを顧客に提案しても、受注獲得増に繋がらないためだ。むしろ、「ポイントは労務関係のフォロー」(PCAの折登専務)や「個別原価管理など、細かいシステムへの要望が高い」(OBCの仁藤室長)など、周辺システムに関する顧客の悩みを解決することが重要になっているようだ。SMBのIT投資意欲は活発 調査会社ノークリサーチの代表者・伊嶋謙二社長が市場展望する「ノーク伊嶋のSMB(中堅・中小企業)短観(春版/約800社調査)」によると、08年度の「SMBのIT投資は前年より増加する」と、IT投資意欲が概ね良好であると指摘している。企業規模別にIT投資意欲を天気にたとえた「年商別のIT天気予報」でも、年商300-500億円の中堅Hクラスに「曇り」が見られる程度で下位層の需要は高いとの判断だ。 同社調査に限らず、SMBのIT投資や需要は高まっているとの判断は目立つ。企業側にIT投資意欲があっても、必要なシステムは基幹でない可能性が高く、受注に至っていないとの予測も立つ。ノークリサーチの同調査でも、SFA(営業支援システム)やCRM(顧客情報管理)、BI(ビジネス・インテリジェンス)への投資意欲が高い一方、ERPの導入は「時期未定」が多い。 会計システムを中心に拡販するISV(独立系ソフトウェアベンダー)は、基幹システムに周辺システムを絡めて提案していくことが求められそうだ。
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