今年のComputexで新しいトレンドが生まれた。それは台湾のIT産業が車載パソコンに軸足を移していることである。通常のPCが飽和状態で、これから先は体力勝負の価格戦争であることを察知し、それを避けようとしているからである。
もう一点、台湾のIT産業の特徴を理解する必要がある、台湾のIT産業は大量生産が中心で、製造工場の要素が強く「研究所」の意識は薄い点にある。例えば、安価なHUBのチップは100%外部調達で、自社(自国)での開発・生産は行っていない、高度な技術や開発に投資が必要な分野には手をつけない、簡単で「アリモノ」の組み合わせで製品化できるものが大部分を占める。このため、周辺機器などには工夫やアイデアを感じる製品をよく見かけるが、iPodのような研究・開発に底力が必要な製品は生まれてこない。
おそらく来年は車載に関するいくつもの関連製品が出展されるに違いないが、彼らのターゲットが日本からオイルマネーが溢れ返っている国々にシフトしている点も見逃してはいけない。実際、今年のComputexではロシア語やアラビア語をよく耳にした。
会場を回るだけでは、その傾向を掴むことはできないが、昼食に会場2階の大食堂へ行けば、来場者の傾向がおおよそ分かってくる。特に最初の2日間は外国人バイヤー向けの期間であるため、顕著に傾向を見ることができる。商談は英語がほとんどであるため、国籍は特定できないが、昼食時は仲間と情報交換や談笑しているので母国語での会話となり、推察が容易となる。

台湾がどこにターゲットを向けているかは今後に扱う商品戦略上、極めて重要である。IT生産では世界の工場と言われるのは台湾で、made in Chinaも実は台湾プロデュースが多く、この国のIT産業の方向性は日本市場の動向に大きな影響力を持っている点を忘れてならない。その一端を垣間見ることができるのがComputexである。
来年の参加受付は年初早々に始まる。日本では今、モバイル市場を活性化させようとしているが、移動体通信のインフラ整備が異なる世界各地の市場を見据えている台湾企業と日本ベンダーの交渉はどのように推移し、次回のComputexにどう反映させるのかが興味深い。(おわり)(若尾和正(ベガシステムズ社長)●文)