その他
京阪神地区のIT事情
2008/10/27 14:53
週刊BCN 2008年10月27日vol.1257掲載
不振を打破できるか!?
新ビジネスモデルの構築へ
大阪、神戸、京都のITマーケットを中心とするベンダーが厳しい状況に置かれている。ユーザー企業がIT投資を抑制していることが最大の原因だが、追い討ちをかけるように、首都圏への一極集中が顕著になってきているという。はたして、京阪神地区のITベンダーは不振を打破できるのか。厳しい状況にはあるものの、新しいビジネスモデルやサービスの構築などで起死回生を図る動きもみられる。(佐相彰彦●取材/文)
■案件が大幅に減少 首都圏への一極集中が進む
京阪神地区を中心にビジネスを手がける地場SIerが頭を悩ます問題のひとつに、「首都圏への一極集中が一段と強まっている」という状況が共通の見方として挙がっている。首都圏に本社を持つユーザー企業は、これまで関西支社や支店などにある程度の決裁権を持たせていたものの、コスト削減の観点から本社での集中購買に転換している。また、「システム統合」の一環として本社にサーバーなどを集約させる動きが活発化していることから、関西拠点におけるシステム案件の絶対額が大幅に減少しているというのだ。
大阪地区をビジネスの柱に据える旭コムテクは、「大阪での案件は、数も金額も極端に減っているのが実態」(常務取締役の冨田晴夫・ITビジネス事業本部長)と打ち明ける。兵庫県をビジネスのメインとする神戸デジタル・ラボでも、「関西圏に限ったことではないが、景気の先行きが不透明なことから、ユーザー企業はIT投資を抑制している。中小SIerだけでなく大手ベンダーも厳しいのではないか」(原田敬士・ビジネス企画推進部長)とみる。
一方、全国網で展開するSIerは順調のようだ。首都圏と関西圏での両アプローチでユーザー企業を囲い込んでいる。例えば大塚商会は、「大阪市場のパイが狭まっているのは確か」(マーケティング本部の池田義己・関西システムプロモーション部長)と認めるものの、「全国網に加え、プリンタ関連やサーバーなどコンピュータ機器、ネットワーク関連製品など幅広い品揃えを持つ当社の強みがユーザー企業の確保につながっている。しかも、ユーザー企業では単一ベンダーに任せるという動きも出ており、顧客あたりの単価が増えている状況」と、案件数の減少をカバーしていると語る。
組み込みソフト開発分野では、三洋電機や三菱電機が携帯電話事業を縮小・撤退するなどの事業再編の影響を受け、「これまでは、組み込みソフト開発は、一度契約すれば食いっぱぐれないといわれ続けてきた。ところが、メーカーの再編で案件自体がなくなるという危険性があり、それが現実のものとなった。(組み込みソフト開発が)安定した事業という“神話”が崩れ去った」と、日本情報技術取引所(JIET)専務理事の佐々木道正・関西本部長は漏らす。
■自社の強みを生かす 他社との連携強化も
京阪神地区が厳しい状況だからといって、地場SIerは景気が明るくなるまで我慢し続けているというわけではない。各社とも、自らの強みを再確認して事業の拡大や他社とのアライアンス強化などで巻き返しを図ろうとしている。
旭コムテクでは、ネットワーク構築に強いことを軸に、SMB向けVoIPビジネスを促進。「PBXのリプレース時期と重なっており、まずは音声のIP化に対するニーズが高まっている。このリプレース需要をしっかりと掴まえる。携帯電話を活用したモバイルセントレックスも需要が出てきているので、確実にビジネスに結びつける」(冨田本部長)としている。また、同社では一極集中の流れを捉えて東京オフィスの基盤固めも進めており、「首都圏での売り上げ比率を高める」方針も示す。
神戸デジタル・ラボでは、「特徴のある営業を行わなくても、いい仕事をすれば発注につながる」(原田ビジネス推進部長)と、ユーザー企業に対して地道にヒアリングや提案などを進めている。「とにかくそのユーザーに何が必要かに絞り込む」。これにより、最近ではウェブシステムの要望が多いことを認識。効果については、売上高が現状維持を続けているほか、東京や九州でも顧客が増えているという。
また、兵庫では地場ベンダーが集まり、地場案件を共同で取りにいく「ひょうごeサポート倶楽部」と称する団体が立ち上がっている。現在では、電子入札関連をビジネスの核としており、電子入札のユーザー企業に対して訪問セットアップや動作確認、利用者登録支援、入札操作支援などを提供。同団体の会長である清原能伸・清原工務店代表取締役は、「県下の電子入札登録社数は1万社程度。その6-7割が“お父さん”“お母さん”企業といわれる中小零細だ。電子入札のサポートを通して、コンピュータのリプレースといった物販などの需要につなげていきたい」と話す。
京都では、計算センターから始まったベンダーがオフコンからオープン環境への移行時代に仕事が回ってこなくなった教訓を生かして、新しいビジネスモデルを構築する動きも出ている。
そのひとつ、近畿リサーチセンターでは、不動産業者から住宅の情報を同業者間で共有したいとの依頼から、不動産業者向けの情報共有サイト「REON(レオン)」を提供している。「京都の不動産業者で企業の体をなしている業者は一握りしかいない。しかも、京都市で景観法が制定されてから、自由に家が建てられなくなったこともあり、業界自体に元気がない。不動産業者に対する、新しい切り口でのシステム提案としてサイトを立ち上げた」(総務部の細川浩二・スペシャリスト)という。
JIET関西本部では、「ほかの地域との連携強化が必要」(佐々木関西本部長)との判断から、各支部の幹部を集めて課題を払拭するフォーラムを来春をめどに開催する計画で、九州地区や東海地区と話が進んでいる。
先行き不透明な市況感も踏まえ、案件数の減少は今後も加速することが予想される。しかし、こうした状況を打破すべく、工夫を重ねて業績回復を図る姿が、京阪神の地場SIerには垣間見られる。
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