売る製品・市場を絞り込み
グループウェア大手のサイボウズ(青野慶久社長)が、今年度(2010年1月期)に入って新たな営業戦略を推進し始めた。コンセプトは「選択と集中」。顧客ターゲットを2領域に明確に定め、戦略的に売る商品も3製品に絞り込んだ。昨年に新設した組織が陣頭指揮を取る。グループウェアのシェア拡大とWeb型データベース(DB)の拡販に本腰を入れることで、不況を乗り切り、成長路線をキープする構えだ。

「選択と集中」戦略で定めた今年度の重点ターゲットは、(1)従業員数100~300人の中堅・中小企業(2)同1000~2万人の大企業。国内全企業のうち、100~300人の企業は4万6000社、1000~2万人の企業は3250社存在するとサイボウズではみている。このうち、(1)の顧客層で同社製品を導入しているのは10%ほどで、(2)は50%と分析。潜在需要が強いと読んだ。
この両ターゲットに対して販売する製品は3種類。大企業・団体向けグループウェアの「ガルーン」と、中小規模向けグループウェア「Office」、そしてWeb型DBの「デヂエ」だ。(1)には「ガルーン」を拡販し、(2)には「Office」と「デヂエ」をセットで提案するのを基本戦略とする。「ガルーン」の既存ユーザー数は約1900社で、「デヂエ」は約4000社。「Office」は2万7000社だ。サイボウズにはこれら3種類のほか、SFAや検索システム、メールシステム、企業向けブログソフトなど約10種類の製品がある。だが、今年度はグループウェア2種類と、Web型DBの合計3製品に絞り込んだ。
販売方法はパートナー経由の間接販売を軸とする。同戦略を推進する国内営業向けの新組織「カスタマー本部」(昨年設置、約110人体制)には、大手企業・団体に直接提案して案件発掘し、その後パートナーに案件を紹介する「MA営業部」と、パートナーの営業・技術支援を専門に手がける「パートナー営業部」を組織。また、インテグレーション力に乏しいパートナーのSIを代行したり、共同で構築したりするSI事業の子会社とも連携体制を整え、パートナーのバックアップ体制を敷いた。初となる製品検証施設も今春に本社に設置する。その一方で、愛知県(主に名古屋市)と大阪地区の営業、パートナー支援が手薄だったことから、パートナー営業部の配下に、それぞれ地域専門営業部門を設置した。目標として、今年度末までに、(1)のユーザー企業を新規200社獲得、(2)は新規150社の獲得を掲げる。
同戦略を立案・陣頭指揮をとる中原裕幸・カスタマー本部執行役員カスタマー本部長は、製品を絞り込んだ理由について「3製品はともに最近バージョンアップしたばかりで競争力がかなり高まった。とくにグループウェアはさらにシェアを高め、2位以下に圧倒的な差をつけたい」と説明している。また、これまでサイボウズが苦手としてきた大企業・団体市場を選定した理由として、「ガルーンの新版が出たことで、数万人規模の顧客にアプローチできるようになった。また、パートナーの支援体制も整ったことで、攻める体制ができた」ことを強調する。不況下にあって、製品と組織体制を整え、満を持しての「選択と集中」戦略により成長路線を敷こうとしている。(木村剛士)